第6回 初対面の感動

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 水の入ったシャーレに一晩浸けておいたコケ。クマムシが好んで住むようなコケを見分ける能力(コケリテラシー)が高ければ、あなたが採取してきたそのコケからは、たくさんのクマムシが這い出ているはずだ。

 観察しやすくするためにコケを取り除き、実体顕微鏡を覗いてみる。5倍程度の低倍率で顕微鏡を覗くと、砂粒やコケの断片が辺り一面に広がって見えるだろう。さすがの私=クマムシのプロでも、この倍率でクマムシを探すのは難しい。初心者であれば、30倍くらいの倍率でシャーレをゆっくりと動かしながらくまなく観察してみよう。

 石やコケの破片などはシャーレの中の水の振動にあわせて、小さくゆらゆらと揺れる。だが、クマムシははっきりと動いているので、注意深く探せば必ず見つかるはずだ。もちろん、あなたのコケリテラシーが高いことが前提だが。そう、焦らずにじっくり、じっくりと目玉を動かして……いた! ガラスシャーレの底、砂粒の間で肢を一生懸命にかいているアニマル。これこそが、クマムシである。

 コケの中にクマムシがいるという知識はあって も、実際に初めて目にする感動はひとしおだ。そしてよくみると、クマムシ以外にもニョロニョロしたやつや、ウネウネしたやつらがいる。こいつらはクマムシに比べると、相対的にかわいくはない。一体こいつらは何者なのか。それは、次回で明らかにしよう。

つづく

堀川大樹

堀川大樹(ほりかわ だいき)

1978年、東京都生まれ。地球環境科学博士。慶応義塾大学SFC研究所上席研究員。2001年からクマムシの研究を始める。これまでにヨコヅナクマムシの飼育系を確立し、同生物の極限環境耐性能力を明らかにしてきた。2008年から2010年まで、NASAエイムズ研究センターおよびNASA宇宙生物学研究所にてヨコヅナクマムシを用いた宇宙生物学研究を実施。2011年から2014年まで博士研究員としてパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001に所属。『クマムシ博士の「最強生物」学講座――私が愛した生きものたち』(新潮社)、『クマムシ研究日誌 地上最強生物に恋して』(東海大学出版部)の著書がある。Webナショジオ「研究室に行ってみた。」の回はこちら。人気ブログ「むしブロ」および人気メルマガ「むしマガ」を運営。ツイッターアカウントは@horikawad