ゲイリー・E・ネル米国ナショナル ジオグラフィック協会会長兼CEO(写真=澤圭太)

 米国ナショナル ジオグラフィック協会の会長兼CEOのゲイリー・E・ネル氏がこのほど来日し、東京・日比谷にある日本記者クラブで会見を行いました。

 ネル氏は、『セサミストリート』で知られるセサミワークショップ社に22年間在籍し、そのうち12年間にわたって同社CEOを務めたメディア界のベテラン。その後、米国の公共ラジオネットワークであるナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の会長兼CEOを経て、2014年1月に現職に就任しました。

 会見では、5月に協会の大幅な組織改編を実施したばかりのネル会長が、これからのナショナル ジオグラフィックが目指す道について語りました。以下、抜粋してご紹介します。

◆メディア混乱期にカギとなるのは高品質ジャーナリズム

 現在、メディアは混乱期にあると考えています。Yahoo!、Google、twitterなどを通じて、「まるで消火栓のホースから水を飲む」ように、毎分、毎秒、情報を消費しています。そうしたなかで、カギになるのは高品質なジャーナリズムです。しっかりした報道は、世の中を変える力を持っています。

 たとえばナショナル ジオグラフィック2013年10月号の特集「コンゴ 暴力が支配する鉱山」では、アフリカ・コンゴの鉱山で採掘される金やレアメタルが「紛争鉱物」と呼ばれ、武装勢力の資金源になっている実態を明らかにしました。すると、この報道を受けて半導体大手の米国インテル社が社内ポリシーを変更。インテルは「紛争鉱物を使用しない」と宣言したのです。
 ほかにも2012年10月号の象牙流通を追った特集は大きな波紋を呼び、米国の政策にも大きな影響を与えています。

◆2014年は「食料問題」に注力

 ナショナル ジオグラフィックはこれまで、世界の水や気候変動、人口問題といった地球規模の問題を特集してきました。その延長上にあるのが、2014年5月号から8カ月連続で特集する「90億人の食」シリーズです。
 テーマは、2050年に90億人に達する世界の人々の食料をいかに供給するか。養殖や食品の廃棄、肉の問題などに焦点を当てていきます。
 雑誌や電子版での特集と同時に、オンラインの食のポータルサイト「90億人の食」を立ち上げ、雑誌を補完するような記事を掲載していきます。

 ●食のポータル「90億人の食」 /nng/sp/food/

◆これからのナショナル ジオグラフィック

 ナショナル ジオグラフィックには、雑誌をはじめ、テレビやモバイル、Webなどたくさんのメディア・プラットフォームがあります。5月に、そうしたプラットフォーム別の組織を、目的別の組織に改編しました。ここでいう目的とは三つ。Inspire(触発)、Illuminate(啓発)、Teach(教育)です。
 科学者や探検家を支援し、新たな発見や地球環境の保全をめざすのがInspire。そうした発見を世界の読者によりわかりやすいストーリーとして描くのがIlluminate。さらに、得られた知見をあらゆる年代、あらゆる生活を送る人々につなげていくのがTeachです。

 ナショナル ジオグラフィックは、生涯を通じて、どこにいても、あなたにとって意味のあるかたちでつながる――そんなメディアをめざします。

(写真=澤圭太)