第4回 「やっと会えたね」

(画像クリックで拡大)

 前々回、しょぼいカラカラのコケにクマムシがいると書いた。クマムシはとても小さいため、肉眼で観察してもコケの中にクマムシの姿を見つけることはできない。顕微鏡で観察しなければならないのだ。しかしながらコケをほぐして顕微鏡で観察しても、クマムシを見つけることはなかなかできない。コケに付着している土や砂の粒と乾眠しているクマムシを区別できないからだ。

 それでは、どのようにしてクマムシを見つければよいのだろうか。「クマムシをコケの中から外におびき出す」がファイナルアンサーだ。屏風の中からトラを出すように。少量の乾いたコケをシャーレに置き、そこに水をかける。コケが吸水し、中にいるクマムシも吸水して乾いた眠りから覚醒する。就寝中に不意に唇を奪われてお目覚めするプリンセスのように。

 復活したクマムシは歩き回り、コケの外に這い出てくる。シャーレを一晩も放置しておけば、水の中でもがもがともがいているクマムシたちを、顕微鏡の下に認めることができるのだ。「やっと会えたね。待ってたよ」

つづく

堀川大樹

堀川大樹(ほりかわ だいき)

1978年、東京都生まれ。地球環境科学博士。慶応義塾大学SFC研究所上席研究員。2001年からクマムシの研究を始める。これまでにヨコヅナクマムシの飼育系を確立し、同生物の極限環境耐性能力を明らかにしてきた。2008年から2010年まで、NASAエイムズ研究センターおよびNASA宇宙生物学研究所にてヨコヅナクマムシを用いた宇宙生物学研究を実施。2011年から2014年まで博士研究員としてパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001に所属。『クマムシ博士の「最強生物」学講座――私が愛した生きものたち』(新潮社)、『クマムシ研究日誌 地上最強生物に恋して』(東海大学出版部)の著書がある。Webナショジオ「研究室に行ってみた。」の回はこちら。人気ブログ「むしブロ」および人気メルマガ「むしマガ」を運営。ツイッターアカウントは@horikawad