第1回 人類史上最高のエネルギー状態を作りだす研究所へ

 スイス、ジュネーブの国際空港から、フランス国境方面に向かう「バスY」に乗ると、30分ほどで欧州原子核研究機構、CERN(セルン)に到着する。バス停の名前もCERN。2013年、ヒッグス粒子なる素粒子を発見したことで名高いLHC(大型ハドロン衝突型加速器)を擁する研究機関だ。欧州21カ国が中心となって共同で運営しており、世界中に1万人以上のユーザー(研究者)がいる。日本からも200人以上が参加している。

 LHC加速器(以下、そう呼ぶ)は、リング状で全周がなんと27キロ。目下、地球上で最も高いエネルギー状態を人工的に作り出せる「エネルギーフロンティア」だ。その時点で、最高のエネルギー状態を実現している実験施設のことをそのように呼ぶ。高エネルギー下でしか単独で存在できない素粒子の振る舞いを観察して、この世界の成り立ちを決めている物理法則を解き明かすことが目標。火の玉状態だった初期宇宙の再現実験ともいえる。

 しかし、CERNの敷地内に入っても、その姿は一向に見えてこない。期待すると肩すかしだ。LHC加速器は、地下約100メートルのトンネル内に設置されている。スイス・フランス国境をまたぐ農村地帯で、加速器の直上では人々がごく普通に日常生活を送っているわけだ。本当にのどかな風景だから、大がかりな素粒子物理研究の最前線だとはにわかに信じられない。

CERN全景。LHCは全周27キロ。スイスとフランスの国境地帯にあり、うしろにモンブランが見える。(写真提供:CERN)(写真クリックで拡大)

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