フランス北西部のブルターニュ半島で、村ごとに伝わってきた独特な伝統衣装。その地に生まれた誇りとともに、若い世代へ受け継がれようとしている。

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ブルターニュの伝統 優美なるレース

フランス北西部のブルターニュ半島で、村ごとに伝わってきた独特な伝統衣装。その地に生まれた誇りとともに、若い世代へ受け継がれようとしている。

写真=シャルル・フレジェ/文=アマンダ・フィーグル

 シトロエンの後部座席から、二人の老女が悠然と姿を現した。頭には高さ30センチを超す、レースの帽子のようなものをかぶっている。駆け寄った家の主人は、満面の笑みで敬意を表した。

 ここはフランス北西部、ブルターニュ半島の西端に位置するビグデン地方。87歳のアレクシア・カウダールと90歳のマリー=ルイーズ・ロペレは、魚の缶詰工場で働いていた普通の庶民だが、近隣で彼女たちを知らない者はいない。
 頭に塔のようにそびえた飾りは「コワフ」と呼ばれ、かつては日常的な装身具だったが、日頃からかぶっているのは今やこの二人だけなのだ。

伝統衣装で踊りを競う若者たち

 ブルターニュの伝統衣装は、村や地方ごとに特色がある。なかでも目を引くのが、白いレースをふんだんに使った「コワフ」と呼ばれる頭飾りだ。
 昔のコワフは簡素で、農村の女性たちの日よけや雨よけといった実用も兼ねていた。それが19世紀から20世紀には、風変わりな形の優美な装飾へと変貌し、画家のゴーギャンをはじめとする芸術家たちを魅了した。

 伝統の装いには時間がかかる。コワフのレースをのりづけし、ピンで留めて形を整えても、霧や雨に遭えばすぐに形が崩れてしまう。ブルターニュでも伝統衣装離れが進み、1950年代頃には若い娘はほとんど着なくなっていた。

 だが、伝統を守る気概にあふれた若い世代もいる。「ケルト・サークル」と呼ばれる伝統舞踏の愛好家グループは、一年中練習に励み、夏祭りのコンテストでは衣装を着て踊りを競う。
 6歳でサークルに入った20歳のアポリーヌ・ケルソディによれば、「古臭いというイメージは薄れてきています」という。17歳のマルウェンヌ・マリエルは「私はフランス人である以前に、ビグデン人なんです」と言う。ビグデンの女性は率直で物おじしないと語る少女たちは、頭に着けたコワフのように、凜とした力強さを放っていた。

※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 フランスのブルターニュ地方で撮影された、伝統衣装をまとった美しい女性たち。写真では、人物の背景がうっすらとぼやけて「紗(しゃ)がかかった」状態になっていることにお気づきかと思います。てっきり今どきのデジタル加工を施したのかと思い確認したところ、シルクスクリーンを背後につって撮るという、とってもアナログな手法だったことが判明。「やっぱりナショジオの写真家!」ですよ。(編集H.O)

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