野生動物をペットとして飼うのは、時に危険をはらむ。ある“猛獣脱走事件”をきっかけに、その是非をめぐって米国で議論が巻き起きている。

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風変わりなペットたち

野生動物をペットとして飼うのは、時に危険をはらむ。ある“猛獣脱走事件”をきっかけに、その是非をめぐって米国で議論が巻き起きている。

文=ローレン・スレーター/写真=ビンセント・J・ミュージ

 人間と生活をともにするペットは犬や猫だけとは限らない。実に多様な動物が、飼い主と一緒に暮らしている。そうしたペットは「エキゾチック・アニマル」と呼ばれ、米国ではその数が国内の動物園にいる頭数を上回るともいわれる。

 おかげでこうしたペットを扱う業界は盛況だが、動物愛護や野生動物の保護を訴える団体は非難の声を上げる。
「たとえ飼育下で生まれた個体でも、野生動物を住宅地に持ち込むのは危険だし、動物にとっても不幸。だから法律で禁止すべきだ」と。

絶滅の危機にあるキツネザルを牧場で

 フロリダ州に広さ3ヘクタールの牧場をもつレスリー=アン・ラッシュを訪ねた。57歳になる彼女の仕事は馬の調教師だが、牧場に小さな動物園を設け、さまざまな動物を飼育している。雄のカンガルー3頭、キツネザル4頭、シカ科のキョンの仲間、ミニブタ、アライグマ科のキンカジュー、そしてドーザーという名の犬もいる。

 キツネザルは、野生では多くの種が絶滅の危機にある。ラッシュは飼育下で繁殖した個体を飼うことで、キツネザルを絶滅から救う手助けができると考えている。実際、彼女は昼夜を問わず動物たちの世話をし、惜しみない愛情をそそいでいるようだった。

トラ5000頭の多くは個人飼育

「エキゾチック・アニマル」の正確な数を把握するのは難しい。世界動物保護施設連盟のパティ・フィンチによると、米国で飼育されているトラは少なくとも5000頭はいるとみられている。その多くは、動物園ではなく、個人に飼われている。それなりのお金をかけ、愛情をもって飼育している飼い主も多いものの、なかには動物たちを狭い檻に閉じ込めて劣悪な環境で飼っているケースもある。

 ライオンやトラ、サル、クマ。今やシマウマやラクダ、ピューマ、オマキザルでさえインターネットで購入できる時代だ。検索すれば、つぶらな瞳でこちらを見つめる動物たちの姿がモニター画面に映し出されるだろう。
 こうした動物たちは、もはや完全に“野生”とは言えないが、かといって家畜化されているわけでもない。どっちつかずの状態に動物たちを置いていることで、さまざまな問題が生まれている。

※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 動物好きな人は考えさせられる記事。犬や猫以外のペットを飼っていれば、なおさらかもしれません。わが家にもセキセイインコが1羽いますが、飼育下で繁殖した子とはいえ、家の中で飼うこと自体が不自然な状態なのだと実感することがあります。発情しても発散する場所がなく餌の吐き戻しが止まらなかったり(オスです)、人間の不注意で踏んづけそうになったり……。
「あの子を必要としていたのは私たちであって、向こうは私たちを必要としていませんでした」。記事の中に出てくる女性の言葉が胸に突き刺さりました。でも、ペットも家族であるという気持ちも痛いほどわかるのです。(編集M.N)

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