暗闇を飛ぶコウモリに、花粉を運んでもらう熱帯の花たち。コウモリの出す超音波を鮮明に反響させる工夫を凝らし、蜜のありかを知らせている。

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コウモリを誘う花の“声”

暗闇を飛ぶコウモリに、花粉を運んでもらう熱帯の花たち。コウモリの出す超音波を鮮明に反響させる工夫を凝らし、蜜のありかを知らせている。

文=スーザン・マグラス/写真=マーリン・D・タトル

 コウモリは暗闇で“耳を使ってものを見る”。

 イタリアの生物学者ラザロ・スパランツァーニがそんな見解を示して人々の嘲笑を浴びたのは、18世紀後半のこと。実際に仕組みが解明されたのは、それから約150年後、1930年代後半のことだった。

 さらに近年、コウモリに受粉を頼る植物が、コウモリに見つかりやすいように花の形状を変えていることがわかってきた。コウモリと花の複雑な関係は、神秘のベールに深く包まれた自然の世界を、私たちに見せてくれる。

花とコウモリの、蜜と受粉をめぐる“取引”

 コウモリは超音波を使って花との位置関係を把握する。声帯を素早く動かして鼻孔や口から短い破裂音を発し、跳ね返ってくる音の違いを高感度の耳で聞きとるのだ。

 長年にわたる進化の結果、蜜を飲むコウモリは特定のグループの植物と密接な協力関係を築き上げた。その原動力となったのは、生命活動の基本である「生存」と「繁殖」だ。

 だが、蜜と受粉の“取引”に当たり、植物はある種のジレンマに陥った。夜間に花を咲かせる植物は、蜜を小出しにしなければならない。コウモリが栄養をたっぷり摂取してしまうと、訪れる花の数が減り、花にとっては繁殖の機会が減ってしまうからだ。

 かといって蜜をあまり出し惜しみすると、コウモリは来てくれない。そこでコウモリに受粉を頼る植物は、進化の過程でうまい解決策を編み出した。蜜の量や質の問題は置いておいて、コウモリの蜜探しの効率を最大限に高めることにしたのだ。

 まず花を咲かせる場所。コウモリが飛行中に見つけやすく、なめやすく、天敵のヘビやオポッサムが潜む場所から離れたところに、甘い蜜をたくわえた花をむき出しにした。また、花の香りの成分に硫黄化合物を加えた。そのにおいは蜜食のコウモリにとって極めて魅力的で、遠くまで伝わる。

 ムクナをはじめとするいくつかの植物に至っては、さらに一歩先を行っている。コウモリの耳に反響音が届きやすくなるように、花や葉の形を変えたのだ。

※ナショナル ジオグラフィック2014年3月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 研究助手をしていた大学時代から、一貫してこのテーマを追い続けているラルフ・ジーモン博士。最初から大学でコウモリの研究をやろうと思っていたのでしょうか。師匠のフォン・ヘルファーゼン夫妻との出会いも大きかったかもしれませんね。目標をはっきりともって学生時代を過ごした彼を、うらやましくさえ思います。今、その時代に戻れたら何をやるでしょうか?(編集H.O)

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