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光さえも抜け出せない強烈な重力をもつブラックホール。謎だらけだったその正体が、少しずつ明らかになってきた。

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星を食らうブラックホール

光さえも抜け出せない強烈な重力をもつブラックホール。謎だらけだったその正体が、少しずつ明らかになってきた。

文=マイケル・フィンケル/イラスト=マーク・A・ガーリック

 ブラックホールが宇宙きっての“暗い穴”になっているのは、いかなる猛スピードでもその重力から逃れることができないためだ。地球の重力から逃れるためには、秒速およそ11キロまで加速すればよい。これは弾丸の数倍に匹敵するスピードだが、人間の造ったロケットは1959年にこの速度を超えた。

 宇宙で一番速いのは、秒速29万9792キロで移動する光だ。ところがこの光の速度をもってしても、ブラックホールの重力には打ち勝てない。ブラックホールの内部にあるものは、たとえ光でも外には出られない。

 ブラックホールの内側と外側を分ける境界線は「事象の地平線」と呼ばれる。それより内側に入り込んだものは恒星であれ、惑星であれ、人間であれ、永遠に失われるのだ。

ブラックホールにも「底」はある?

 ただ、ブラックホールは無限に深いとよくいわれるが、それは誤りだ。底はある。もっとも、あなたが生きてそれを見ることはない。底に近づくにつれ、重力は急激に強くなっていく。足から先に落ちた場合には、足にかかる重力が頭にかかる重力よりはるかに大きくなる。そのために体は上下に引き伸ばされ、最後には引き裂かれる。物理学者はこの現象を「スパゲティ化」と表現する。

 引き裂かれたあなたの破片は底にたどり着く。たどり着いたブラックホールの中心は特異点と呼ばれる。特異点がどんなものかは、まったくわかっていない。その謎を解けば、科学の歴史に残る偉業となるだろう。まずは一般相対性理論と量子力学を超える新たな理論が必要だ。二つの理論は宇宙の大部分をうまく説明してくれるが、ブラックホールの内部のような極端な場所にはどちらも適用できないのだ。

 特異点は極めて小さいと考えられている。小さいなんてものではない。特異点を1兆の2乗倍に拡大し、世界一優れた顕微鏡でのぞいても、何も見えはしないだろう。しかし少なくとも計算上は、何かがある。単に小さいだけではなく、想像もつかないほど重い何かが。物理学者の大多数は「ええ、ブラックホールは実在しますよ。ただし、中に入って確認できるわけではないから、特異点の内部に何があるのかは決してわかりません」と言う。

※ナショナル ジオグラフィック2014年3月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 早ければ1年以内に、宇宙規模の大イベントがあるといわれています。私たちの住む天の川銀河の中心にある巨大なブラックホール(いて座A*:エースター)にガス雲が接近中で、今まさに飲み込まれようとしているのです。ブラックホールが星やガスやちりなどいろんなものを吸収する天体であることはよく知られた事実ですが、実際に飲み込む瞬間にはなかなか遭遇できません。飲み込んでいるあいだ、世界各地の天文台がいて座A*に焦点を合わせ、“食事の風景”をとらえることになっています。
 では、そもそもブラックホールとはどんな天体なのか。私たちはその実像をほとんど知りません。どうやって生まれるのか? なぜそんな不思議な天体があるとわかったのか? 吸い込まれた星はどうなるのか? この宇宙には何個くらいあるのか? まわりのものを吸い込んだ果てに将来どうなっていくのか? 記事では、このような謎を次々に解き明かしていきます。世紀の天体イベントを前に予備知識を仕入れ、期待に胸をふくらませるにはうってつけの特集です。(編集N.O)

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