第2回 自分の腕を切り落として窮地を脱出した男

救出

 「助けてください」という声を聞いたオランダ人観光客が振り返ると、ラルストンが歩いて近づいてきた。乾いた血と新しい血にまみれ、すっかりやつれ、脱水症状を起こしていたので、きっと瀕死の状態に見えたに違いない。しかし言葉は明瞭だった。

「こんにちは、僕の名前はアーロン。土曜日に崖から落ちて、岩に挟まれてしまったんです。4時間前に腕を切断したばかりなので、治療が必要です。ヘリコプターを呼んでください」

 病院に着いたとき、ラルストンはヘリポートから救急処置室まで助けを借りずに歩くことができた。救助隊員はこう語っている。「この道に入って25年になるが、アーロンほど生きようという意志を持った闘士を見たことがない」
 押し潰された腕を回収するため、救助隊員が現場に派遣された。360キロの岩を持ち上げるのに、屈強な隊員3人がそれ相応の装備を用いても1時間かかった。砕け、切断された腕を縫い合わせることは不可能だった。
 この事実一つで、ラルストンは自分の選択は正しかったのだと確信した。「あの岩はどうしようもなかったし、僕の腕も同様だった」

 事故から3年後、アーロン・ラルストンは結婚、2010年には息子も生まれた。彼は今も、山登りを続けている。


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本当にあった 奇跡のサバイバル60

 岩に挟まれた自分の腕を切り落として脱出した登山家、8年間地下室に監禁された少女、ヒッチハイカーを乗せたら身ぐるみをはがされて不毛の荒野に放置された男、難破した船上でくじ引きで負けた仲間を食べて生き残る男たち……。
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