第2回 宇宙エレベーターの「支柱」は1.38mm!

「20トンのケーブルが固定できたら、そこから上がっていける軽いクライマーを次々に地上から出発させて、もとのケーブルを補強して太くしていくというのが第2段階になります。補強が進むにつれてクライマーもだんだん大きくしていくんですけど、我々の計算ですと510回繰り返してやっと7000トンになります」

 クライマーが薄いケーブルを昇りながら、最初は4ミクロンしかなかったケーブルをどんどん厚くしていく。そのために接着剤が必要という考えもあるが、ケーブル同士、ファンデルワールス力(分子間力)でくっつくのが理想だそうだ。

 なお、重要な点をひとつ。アーサー・C・クラークの『楽園の泉』では、赤道直下から宇宙エレベーターが立ち上がっていた。しかし、現在の研究では、必ずしも赤道直下にこだわる必要はないそうだ。

「緯度で言うと、南北35度くらいまでは問題ないのではないかと言われていますね。大阪はぎりぎりOKなんだけど、東京はちょっと北すぎるだろうとか。まあ、わたしたちは、ケーブルの固定や制御のしやすさから、赤道やその近くの海を想定しているわけですが」

 日本では大阪がちょうど北緯35度くらいだから紀伊半島、四国、九州、沖縄近辺の海は充分に宇宙エレベーターの地球港、アース・ポートの建設地の候補になりうる。今、ロケットの宇宙センターがある種子島の沖合に新たな宇宙への窓口として、アース・ポートが建設されるというのもありうるかもしれない。

宇宙エレベーターの施工ステップ(画像提供:大林組)(画像クリックで拡大)

つづく

石川洋二(いしかわ ようじ)

1955年、静岡県生まれ。株式会社大林組 エンジニアリング本部 環境技術第二部 上級主席技師。工学博士。1978年、東京大学工学部航空学科卒業。1983年、東京大学工学系大学院航空学専修博士課程を修了後、東京大学宇宙航空研究所、レンスラー工科大学、NASAエイムズ研究センターを経て、1989年、株式会社大林組に入社。月惑星居住計画、地球環境工学などに携り、2013年より現職。宇宙エレベーター建設計画プロジェクトのリーダーを務めている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、中学生になったリョウが世界を飛び回りつつ成長する姿を描いた切なくもきらめく青春物語『リョウ&ナオ』(光村図書出版)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider