第1回 宇宙エレベーターはいつできる?

「建設会社にとっては、これはお手のものなんです。施工の専門家もプロジェクトに入れて、一番問題となるケーブルの施工過程を検討してもらいました。ケーブルにかかる張力のシミュレーション結果も利用して、数値的な裏付けのある施工工程を設計してもらったことで、施工が現実的なものになったのです」

 さらに、プロジェクトでは宇宙エレベーターのケーブルを地球上に固定する仕組みについても検討している。

「地球側のターミナルは、アース・ポートと言ってますけど、これもまさに建設会社の領分で、土木本部、それも海洋土木の専門家を呼びました。海の上に作るので、浮体構造物の専門家です。油田のリグなどをつくる技術がそのまま応用できますから、この部分は今も実現可能なところですね」

 さらにさらに、宇宙エレベーターには、静止軌道ステーションなど、さまざまな構造物が作られる。こちらの方は、むしろ未知の領域。

「設計本部から、設計と意匠の専門家を呼びました。そもそも静止軌道ステーションをどんな形にしたらいいか、ですとか。これは、自由度が高くて、みんな嬉々としてやっていましたね。制約がないし、お客さんにプレゼンして納得してもらう必要もないし(笑)」

 石川さんをはじめとして、気象・土木・意匠・設計・施工、といった専門家が集まり、プロジェクトは、現時点で考え得る宇宙エレベーターの構想を描いた。

 それぞれ所属部署での「本業」があったわけで、ある意味「部活動」のような仕事だったという。

つづく

石川洋二(いしかわ ようじ)

1955年、静岡県生まれ。株式会社大林組 エンジニアリング本部 環境技術第二部 上級主席技師。工学博士。1978年、東京大学工学部航空学科卒業。1983年、東京大学工学系大学院航空学専修博士課程を修了後、東京大学宇宙航空研究所、レンスラー工科大学、NASAエイムズ研究センターを経て、1989年、株式会社大林組に入社。月惑星居住計画、地球環境工学などに携り、2013年より現職。宇宙エレベーター建設計画プロジェクトのリーダーを務めている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)、中学生になったリョウが世界を飛び回りつつ成長する姿を描いた切なくもきらめく青春物語『リョウ&ナオ』(光村図書出版)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider

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