第1回 宇宙エレベーターはいつできる?

 建設会社が、自社の叡智を結集して、SFめいた構想を描き提案する、ということはよくある。あるいは、よくあった、というべきか。他の建設会社と同様に、大林組も1980年代後半から90年代にかけて、月面基地、火星基地、ラグランジュポイントの利用(スペースコロニーなど)といった構想を次々と発表した時期があった。一時それが途絶えた理由は、景気の失速が大きいのではないか。また、現在の技術では、月や火星に行くコストが思いのほか高いということが世界的に分かってきたこともあるだろう。今、宇宙エレベーターを取りあげるのは、景気の回復というよりも、より地上に近く、実現の可能性も見えてきたこと、月や火星に行くコストを格段に下げる手段であること、といった複合的な背景があるようだ。

 さて、研究室ならぬプロジェクトチーム。学術的な研究というより、既存の知識や手持ちの材料、技術から、建設会社らしい提案をするのが眼目である。そのために社内から選りすぐりのメンバーが集められた。まず石川さん自身は、もともと宇宙工学で学位を取り、博士研究員としてNASAのエイムズ研究センターに所属していたこともある人物だ。プロジェクトのとりまとめ役として適任。ほかには、どんなメンバーがいるのか。

「まず、気象学をやっていた人。例えば、東京スカイツリーの地上から600メートルの高さというのは地表とは気象が違って、これまで経験したことがなかったものでした。そういうことを考える専門家がうちにいます。気象学をやっているだけにコンピュータモデルでのシミュレーションが得意なんです。そこで、宇宙エレベーターの基本である地表と宇宙を結ぶケーブルの挙動のシミュレーションをしてもらいました」

 宇宙エレベーターは、軌道塔などと呼ばれることもあって、バベルの塔のような巨大建築物をイメージする人も多いかも知れない。しかし、本当のところは、長さ10万キロメートル近い1本の細く薄く軽いケーブルが「宇宙エレベーター」「軌道塔」の本体だ。

 ケーブルの挙動を検討し、充分に建設可能と分かったとすると、それを「いかに」行うか、つまり施工の発想が必要になる。