第1回 宇宙エレベーターはいつできる?

 ぼくが訪ねたのは、大学や国の機関の研究室などではなく、建設会社。それも、東京スカイツリー®の施工会社として、「タワー」「塔」に実績のある株式会社大林組だった。ここには、組織としての「宇宙エレベーター研究室」はないものの、「宇宙エレベーター・プロジェクトチーム」があると聞いた。

株式会社大林組 エンジニアリング本部 環境技術第二部 上級主席技師で宇宙エレベーター建設プロジェクトの幹事を務める石川洋二さん。(写真クリックで拡大)

 話をうかがったのは、プロジェクトチームのとりまとめ役である、石川洋二さんである。

「宇宙エレベーターといいますと、ロケットよりもむしろ鉄道を考えてもらえればいいと思うんです。地球から約10万キロメートルのケーブルを直立させます。ケーブルをどうやって直立させるかは置いておいて、それが鉄道のレールの役割をする。そのケーブルを伝わって、クライマーっていう乗り物──これは電車の車両と考えていいと思いますけど──それが地球から出発して昇ったり降りたりする。で、ところどころに目的に応じて、駅にあたる施設をつくるというのが基本的な構成です」

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 宇宙エレベーターは、宇宙ロケットではなく、むしろ宇宙へ行く鉄道。昇っていくと次第に地球の重力圏から離れていくわけだが、石川さんたちの構想では、ちょうど火星の重力に等しくなる高度3900キロのところに火星重力センター、月の重力に等しくなる高度8900キロのところ月重力センターがあって、火星環境、月環境に似せた環境での実験などが行えるようになっている。

 高度2万3750キロメートルのポイントには、低軌道衛星投入ゲートを設置し、下の軌道に「落とす」要領で、さまざまな低軌道に人工衛星を投入できる。低軌道とはその呼び名の通り、地球を周回する軌道の中で高度が低いもので、だいたい300キロメートルから千数百キロメートルくらいの高さのものを指すようだ。

全体構成図。(画像提供:大林組)(画像クリックで拡大)

 さらに高度3万6000キロメートルまで上がれば、そこは静止軌道ステーションだ。その高度では、地球の自転の角速度と、人工衛星の角速度がちょうど同じになるため、地上から見ると1点に留まっているように見える。だから静止軌道という。天気予報などに活用される静止衛星はここに置く。

 さらにさらに昇って、高度5万7000キロメートルで火星連絡ゲート、終端点の高度9万6000キロメートルで木星・小惑星へのゲートと、高度を稼いだ分、地球の自転による速度が増し(同じ角速度なら、地球の中心からの距離に比例し速度は増す)、より「遠く」へと飛び立つのが簡単になる。