惑星は同じ軌道を公転し続けるわけではない。太陽系の初期、木星や土星の軌道の変化が大混乱を引き起こし、地球や月に無数の小惑星や彗星が降り注いだ。

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太陽系 激動の過去

惑星は同じ軌道を公転し続けるわけではない。太陽系の初期、木星や土星の軌道の変化が大混乱を引き起こし、地球や月に無数の小惑星や彗星が降り注いだ。

文=ロバート・イリオン/写真=マーク・ティッセン/イラスト=デーナ・ベリー

 水金地火木土天海、そして冥。学校で習った太陽系の惑星たちは、時計の針のように永遠に同じ軌道をぐるぐると公転している。そう考えている人も多いだろう。しかし、実際はそうではなかったようだ。

巨大惑星がもたらした大混乱

 太陽と惑星の重力の相互作用から惑星の軌道を計算できることを示したのは、17世紀のアイザック・ニュートンだ。ただ、ニュートン自身は、惑星の運行が実際にはもっと複雑なことを知っていた。惑星と惑星の間にも重力が働くからだ。
 その力は太陽の重力と比べればはるかに小さいが、長い時間をかけて近くの惑星の軌道に影響を及ぼす。理論上は、惑星間に絶えず重力が働くため、小さな軌道のずれがしだいに大きくなり、やがて軌道の大移動や交差が起こる可能性がある。

 だが、ニュートンは将来の軌道の状態までは予測できなかった。
 複数の天体が互いに重力を及ぼし合うとなると、その関係はあまりにも複雑で、遠い未来の軌道を計算できる公式を導き出せなかったのだ。
 過去の観測技術では、惑星の軌道が変化したことを示す証拠は得られなかった。
 そのため、太陽系の惑星は過去も未来も同じ軌道を公転し続けるものだと信じられてきた。

 しかし、この10年ほどの間に、初期の太陽系で大激動が起きたとの説が出てきた。
 太陽系の誕生後、何億年もたってから木星、土星、天王星、海王星といった巨大な惑星が軌道を変え、その強大な重力の作用で他の天体を吸収したり、はね飛ばしたりしたという説だ。

冥王星を“捕獲” した海王星

 最初の手がかりは冥王星から得られた。冥王星は、8個の惑星の公転軌道面から大きく傾いた軌道を運行する。しかも、太陽に最も近いときの距離は地球と太陽の距離の30倍で、最も遠いときは50倍と、極端な楕円軌道を描く。
 さらに興味深いのは、冥王星が海王星と「共鳴」の関係にあることだ。海王星が太陽の周りを3周する間に、冥王星はちょうど2周する。しかも、両者は軌道が交差しているにもかかわらず、決して近づくことはない。

 1993年、米国アリゾナ大学のレニュー・マルホトラは、この共鳴関係の成り立ちを説明する仮説を立てた。
 それによると、小惑星や彗星が無数にあった太陽系の初期に、海王星は今よりも太陽に近い軌道を公転していた。海王星に近づいてきた小惑星や彗星は、その強大な重力の影響で、太陽の方向や太陽系の外へはじき飛ばされる。このとき海王星そのものも反作用を受けて、わずかながら軌道を変える。
 マルホトラのシミュレーションでは、海王星の軌道は、平均すると太陽から離れる方向にずれていった。その結果、外側の軌道を回っていた冥王星を海王星が重力で“捕獲”して、共鳴関係が成立したというのだ。

 この仮説は10年もたたないうちに証明された。

 海王星よりもはるか遠くに広がる暗い領域「カイパーベルト」に「冥王星族」と呼ばれるいくつかの天体があることがわかったのだ。冥王星族の公転軌道は、冥王星と同様、海王星と2:3の共鳴関係にある。この関係を説明するには、海王星の軌道が過去にカイパーベルトのほうに動き、冥王星族が海王星に引っぱられて新しい軌道に収まったと考えるしかないと、マルホトラは言う。
 「冥王星族の発見が決め手となりました。惑星の軌道が変わるという考え方は、広く受け入れられたのです」

 海王星をはじめとする巨大惑星にこうした軌道の変化が生じたことで、初期の太陽系に大変な事態が引き起こされた。地球や月に無数の小惑星や彗星が降り注ぐ、「後期重爆撃期」と呼ばれる大混乱が始まったのだ。

※ナショナル ジオグラフィック7月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 太陽系の誕生から5億~7億年後、地球や月に小惑星や彗星が無数に降り注いだ「後期重爆撃期」。その原因が木星や土星などの軌道の変化だったという仮説を、本文では紹介しています。

 アーティストのデーナ・ベリーは、激動の過去を精緻なイラストで再現してくれました。小惑星や彗星の“重爆撃”を受ける地球を描いた最初のイラストも迫力がありますが、私がいちばん心惹かれたのが、特集の最後に掲載したイラストです。太陽系を雲のように取り囲む「オールトの雲」に浮かんだ未知の惑星。その向こうには小さく太陽系が見えます。木星にそこまではじき飛ばされた惑星が新型望遠鏡で発見されるかもしれないと考えると、ワクワクしてきます。(編集T.F)

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