• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

季節ごとに大移動する渡り鳥たちが、地中海沿岸で大量に捕獲され、殺されている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

渡り鳥 最後のさえずり

季節ごとに大移動する渡り鳥たちが、地中海沿岸で大量に捕獲され、殺されている。

文=ジョナサン・フランゼン/写真=デビッド・グッテンフェルダー

 北から南へ、南から北へ。カモ、ハト、シギ、ウズラなど大小さまざまな鳥たちが、季節の移り変わりとともに大空を渡っていく。

 こうした渡り鳥が今、地中海地域で厳しい運命にさらされている。食用や金もうけ、娯楽のために、毎年数億羽が殺されているのだ。

イタリアから押し寄せるハンターたち

 なかでも悪名高いのがイタリアだ。地方の森林や湿地帯では狩猟の銃声が鳴りやまず、わなも数多く仕掛けられている。美食の国フランスでも、禁猟のズアオホオジロ(オルトラン)をこっそり食べる人が後を絶たない。狩猟の対象になっている野鳥のリストには、種の存続が危ぶまれるシギやチドリの仲間が多く含まれる。

 スペインでは、わなによる捕獲が今でも広く行われている。狩猟に適した鳥がいないマルタ島では、渡り鳥が通りかかるとハンターはここぞとばかりに銃口を向ける。キプロス島ではズグロムシクイが違法に大量捕獲され、人々の胃袋に収まっているのだ。

 それでもEU加盟国では、少なくとも形の上では渡り鳥の捕獲にさまざまな規制が設けられている。世論も渡り鳥の保護を支持しているし、自然保護団体も各国政府に法整備を働きかけている。

 しかし、EUに加盟していない地中海諸国での状況は、まったく改善されていない。

 たとえばアルバニアには、繁殖や渡りのために鳥たちが飛来する場所を保護する法律があることはある。しかし、40年間以上にわたってこの国を支配した共産主義独裁政権の崩壊後、法律はただの絵に描いた餅となった。

 そうなると、EUの規制が厳しいイタリアからハンターたちが大挙して、アルバニアに押し寄せてくるようになったのだ。

渡り鳥を吸い込むブラックホール

 一時期イタリアの支配下にあったアルバニアにとって、イタリア人は洗練された文化と近代化の象徴だ。
 イタリア人ハンターたちは自ら鳥を撃つだけでなく、無差別な狩猟とそのための手段をアルバニアに持ち込んだ。鳥の鳴き声を再生し、たやすくおびき寄せる最新鋭の音響装置もその一つだ。そのうえ人口300万のこの国に、推定10万丁もの散弾銃が出回っているという。今やアルバニアは、ヨーロッパ東部の渡り鳥の“ブラックホール”と化した。何百万羽という渡り鳥が吸い込まれ、生きて出てくるものはほとんどない。

 賢いのか運が良いのか、アルバニアには寄らずに通り過ぎる鳥もいる。海沿いの町ベリポヤで、カモ科のシマアジの大きな群れが遠く沖合の空を右往左往していた。
 アドリア海を渡って疲れきっているが、海岸にはハンターたちの潜むテントが点々と並んでいて、餌場である湿地に近づくことができないのだ。

※ナショナル ジオグラフィック7月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 私が幼いころ、実家がある田舎ではスズメを捕って食べる習慣がありました。お盆で帰省した叔父たちが、網を持って農作業小屋の中で大奮闘。夕食には羽をむしって網で焼かれたスズメが並んだものです。動物愛護の名の下にそれを真っ向から否定されたら、やっぱり反発してしまうかもしれません。この特集では、ただ殺される鳥がかわいそうと思うにとどまらず、その奥にある主題を読み取っていただけると幸いです。(編集H.O)

この号の目次へ

ナショジオクイズ

写真はとある旧人類の模型ですが、現代の非アフリカ系の全員にこの旧人類のDNAが入っているそう。さて、その旧人類とは?

  • ナヤンデルタール人
  • アフレデルタール人
  • ネアンデルタール人

答えを見る

ナショジオとつながる

週2回
配信

メールマガジン無料登録

メルマガ登録の詳細はこちら

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

広告をスキップ