第5回 実は世界の最先端だった旧石器時代の日本列島

「──本州ですと、伊豆七島の中に神津島っていう島がありますけど、そこまで黒曜石(こくようせき)を取りに行ってるんですね。黒曜石って産地分析ができるので、神津産の黒曜石がもう3万8000年前ぐらいから静岡のあたりで出るんです。明らかに取りに行ってるんですよ。これも世界最古級」

「──静岡県の遺跡で見つかった落とし穴があるんです。この写真は現在の表土を全部剥いで3万年以上前の地表面を出したところですが、小さな谷筋に丸い穴がいくつも空いている。で、旧石器時代の落とし穴って、日本にしかないんです。しかも3万年前を超えてますので、世界で最古のわな猟の証拠ですよね」

「──長野県あたりでよく出てくる、砥石ですとか、刃の先を磨いた石斧(せきふ)があるんですが、こういう磨製の技術って、新石器時代になってから世界各地に普及するんです。日本のものは、オーストラリアと並んで世界最古級なんですね。日本で発明されたのか、大陸にもともと起源があるのか、まだわからないんですけど、この遺跡で出たものを見ると、もうバリバリ研いでますからね」

 海部さんは、展示を前にして、本当に楽しくてたまらないというふうな口調で語ってくれた。最古級だからすごい、というだけではなく、人類史の中で、我々、日本列島の祖先がどのような位置にいて、全地球的な人類拡散史・文化史を再構成するピースを提供できるか、ということなのだから。

 ぼくの理解では、こういった人類の起源や拡散に関するネタは、ネイチャーやサイエンスといった、メジャーな学術誌がもっとも好む話題のひとつだ。あるいは、カメラマンが写真を撮りためて売り込めば、『ナショナル ジオグラフィック』の本誌に特集が出ても不思議ではない。博物館で普通に展示されているレベルできちんと調査され、研究されているものが、まだ世界にはそれほど知られていないというのは驚きでもある。

3万8000年前には本州から神津島に黒曜石を取りに行っていたことがわかっている。世界最古級とは、すなわち当時の最先端! (写真クリックで拡大)