第1回 人類進化の「常識」を覆した“小さな巨人”、フローレス原人

 ウォレス線というのは、進化論の「もう1人」の提唱者アルフレッド・ウォレスにちなんだもので、生物の分布境界線だ。フローレス島はその東側に位置し、つまりはアジアの生き物が移動しにくい立地なのである。ホモ・サピエンスは航海術を身につけそれを越えたのだが、ホモ・フロレシエンシスのような原人の段階では無理だったであろうという予断があったという。

海が深いエリアでも島の周囲は当然浅いが地図では省略した。アルフレッド・ラッセル・ウォレスについては2008年12月号特集「ダーウィンになれなかった男」もご覧ください。(画像クリックで拡大)

 170万年前以降に原人の大型化が起こったことを考えると、それ以降の人類として極端に小さいこと、わずか2万年あまりと「最近」まで生きていたこと、さらにはウォレス線を越えて海を渡ったことなど、どれをとっても大きな話題である。

 そして、さらにこんなふうに海部さんは付け加えた。

「もうこれらだけでもすごくて、余りに話題が多いんですが、フローレス島自体が、動物が島嶼化(とうしょか)した島なので、本当にワンダーランドみたいなところだったんです。小型化したゾウの仲間であるピグミー・ステゴドンだとか、巨大化したハゲコウという鳥だとか、今も生きているコモドオオトカゲとか。そこに原人が紛れ込んでああいう不思議な進化を経験していたっていうのは、本当に誰も考えてなかったことだったんです」