第1回 人類進化の「常識」を覆した“小さな巨人”、フローレス原人

海部陽介さん。(写真クリックで拡大)

「まずは劇的な矮小化(わいしょうか)ですね。あまりに小さいんですよ。身長が1メートルほどしかないんです。最初に化石を研究したオーストラリア人研究者は、一番地理的に近いジャワ原人から矮小化したという説を、考えられる説明のひとつとして述べたんです。でも、人類の進化というのは、原人以降は脳も体も大型化するので、それが全く逆の方向へいってるわけなんですね。特に脳が小さいのは問題でして。そもそも、ホモ属の定義が、脳がある程度大きいことも入っているので、定義変更しなきゃいけないことになる。それぐらい大ごとなんです」

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 フローレス原人、ホモ・フロレシエンシスは、その小ささゆえにJ・R・R・トールキンの名作『指輪物語』にちなんで「ホビット」という愛称で呼ばれる。疑義というのは、あまりにも小さいため、原人から矮小化したという考えには無理があるというものだ。現生人類ホモ・サピエンスでたまたま低身長症などで小さかった人の骨が見つかったのではないか、という「そんな化石自体、信用ならん!」というのに等しい意見まであった。

「時期的には一番最近まで生きていた原人ということになりますし、当然、ホモ・サピエンスがいた時代です。それに場所も興味深いんです。フローレス島は、サピエンスがアフリカから拡散してオーストラリアまで入るルートの途中にあるんですね。そこに、あんな原始的な人類が生き残っていたわけですから。僕自身、ウォレス線を越えるのは、ホモ・サピエンスになってからだと思い込んでました。あの海は渡れないだろうと。フローレス島から古い石器が出る話は前からあったんですけど、あんまり真剣に見てなかったんです。フローレス原人の化石が出て、ああ、自分が間違っていたと思い知らされたんですね」