第1回 「裏の仕事」は“系統樹ハンター”

 つくば市の一角に農林研究団地と呼ばれる一角がある。

 農村工学研究所、食品総合研究所、中央農業総合研究センター、動物衛生研究所……といった農業畜産関係の研究所が、昔、海軍航空隊の飛行場だったという敷地に集っている。ひとつのマンモス団地が丸々入るであろう広大さで、桜の名所でもある緑豊かな土地のそこここに、たがいに近接分野の研究所がある、という印象だ。

 そんな中、今回訪ねたのは、独立行政法人・農業環境技術研究所。「研究団地」という表現に似つかわしく、20世紀の匂いがする団地風の建物だった。上席研究員であり、東京大学大学院農学生命科学研究科の教授なども兼任する、三中信宏(みなか のぶひろ)さんが、お目当ての人物だ。

 テーマは……「農業環境技術」と聞いてすぐに連想できるようなものではないと、最初に断っておく。

 ぼくは三中さんの『系統樹思考の世界』『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』といった著作を読み、感銘をうけてきた。と同時に「とても大事なことを述べているように思えるのに、全貌が掴みにくい」「いくつも興味をそそられる論点があるのに、それをトータルに人に伝えようとすると難しい」などとも感じてきた。しかし、昨年、図像満載でビジュアル的にも美しく、かつ、読みやすい『系統樹曼荼羅―チェイン・ツリー・ネットワーク』(NTT出版)という著作が出たので、これを機に是非、お話を伺いたい! と考えた次第。