絶滅した動物を、最新のクローン技術でよみがえらせる――SF小説のような話だが、その実現は意外に近そうだ。

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復活する絶滅種

絶滅した動物を、最新のクローン技術でよみがえらせる――SF小説のような話だが、その実現は意外に近そうだ。

文=カール・ジンマー/写真=ロブ・ケンドリック

 人間が絶滅に追いやった動物はたくさんいる。現在も危機に瀕している種は多く、絶滅種のリストに名を連ねる動物は、今後も増える一方だろう。

 そんな流れをクローン技術で変えられると信じ、情熱を傾ける研究者が少ないながらも存在する。

 絶滅した生物種をよみがえらせるというアイデアは、作家マイケル・クライトンが『ジュラシック・パーク』の恐竜たちを世に放って以来、現実とSFの狭間を長らくさまよっていたが、獣医師のフェルナンデス=アリアスは「ついにその時が来たのです」と言う。

 フェルナンデス=アリアスが、絶滅したヤギ、ブカルド(別名:ピレネーアイベックス)の復活に初挑戦したのは10年前。クローン羊のドリーが、哺乳類初の成功例として誕生してからまだ7年しかたっていなかった。しかしその後、クローン技術の改良が続き、いまやクローンづくりは高リスクの実験から、当たり前の作業になりつつある。

絶滅させたのは人類なのだから

 ただし、復活が望めるのは、今から数万年前までの間に死に絶えた生物種に限られる。無傷の細胞か、少なくともゲノムを再構築できる程度のDNAが残っている必要があるからだ。つまり、復活が理論的に可能なのは、人類が世界の覇者になっていく過程で絶滅した生物種ということになる。さらに年代が近くなるほどに、狩猟や生息環境の破壊、病気の蔓延など、絶滅の直接のきっかけとなった加害者が人類であるケースが多くなる。復活に力を入れたくなる理由は、このあたりにもあるのだろうか。

 「人類が絶滅に追い込んだ種は、よみがえらせる義務があると思います」。オーストラリア、ニューサウスウェールズ大学の古生物学者マイケル・アーチャーはこう語る。神への冒とくではないかという非難も、アーチャーは意に介さない。「むしろ自然界の動物を絶滅させたことこそ、神への冒とくではないでしょうか」

 そのマイケル・アーチャー率いるオーストラリアの研究グループは、2013年1月初旬、1980年代半ばに絶滅したオーストラリアに固有のカエル、カモノハシガエルとキタカモノハシガエルの復活に取り組んでいることを公表した。

 これら2種のカエルは、繁殖の方法がかなり変わっている。雌が産んだ卵に、雄が精子をかけると、受精卵を雌がまるごと飲み込むのだ。卵に含まれているホルモンの作用で胃酸の分泌が止まるため、実質的には胃が子宮の代わりとなる。数週間後、雌の口から小さなカエルが飛び出してくる。こんな変わった習性から、これらのカエルは「イブクロコモリガエル」の別名でも知られている。

 しかし、2種のカモノハシガエルは、詳しい研究が始まった矢先に、あっけなく絶滅してしまった。

復活は是か非か

 だが、復活させる必要が本当にあるのだろうか? 雌が胃袋の中で卵をかえすカエルがいるかどうかで、世界はどれだけ変わるのか。

 米ニューヨークにあるストーニーブルック大学の進化生物学者ジョン・ヴィーンズは「現に危機に直面している種や生態系を救うことこそ、喫緊の課題です」と話し、オーストラリアのマードック大学のグレン・アルブレクトは「絶滅種をいくら復活させても、生息環境の整備なしではどんな努力も徒労であり、ただの浪費に終わります」と指摘する。

 米スタンフォード大学の生命倫理学者ハンク・グリーリーは、この問題の倫理的、法的な側面に強い関心を寄せてきた。そんなグリーリーも、絶滅種をよみがえらせるという離れ業を可能にした科学の進歩を高く評価し、いたずらに敬遠するのではなく、むしろ受容すべきだと考えている。グリーリーは言う。「掛け値なしに、すごいことだと思いますよ。たとえばサーベルタイガーなんか、いつかこの目で見てみたいものです」

※ナショナル ジオグラフィック4月号から一部抜粋したものです

編集者から

 絶滅した動物が、最先端のバイオテクノロジーでよみがえる――まるでSF小説のような話ですが、もはや実現も目前。となると、ロマンも感じつつ手放しでは喜べない、複雑な気持ちになります。

 ところで、リョコウバト最後の一羽となった「マーサ」の名前は、米国の初代大統領ジョージ・ワシントンの夫人の名にちなんでつけられたそうです。この有名なハトを一目見ようと多くの人々がシンシナティ動物園を訪れ、1914年に死んだときにはテレビのニュースにもなりました。希少になってから大事にされるとは、皮肉なことではありますが……。当時の貴重なニュース映像を、電子版でご覧いただけます。(編集H.I)

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