第1回 世界初の民間商用宇宙船開発に携った日本人

ISSに近づくドラゴン宇宙船。(c)NASA
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 昨年(2012年)5月に、世界ではじめての民間商用宇宙船が、国際宇宙ステーション(ISS)に補給物資を届けることに成功した。NASAからミッションを請け負ったのは、米国の宇宙ベンチャー企業スペースX社で、使用したロケット、ファルコン9も宇宙船のドラゴンも、自ら開発したものだった。物資の輸送だけでなく、将来的に宇宙飛行士をISSに運ぶことも現実的な目標として設定されている。

ファルコン9。(c)NASA/Jim Grossmann
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 ぼくは『夏のロケット』(文春文庫)という90年代の作品で、民間による宇宙開発の可能性を描いた。かつて宇宙に憧れた30代前半のオジサン(ぎりぎり若者といえなくもない)が、宇宙ロケットを作ろうとする話だ。作中では、スペースX社のファルコン9のように周回軌道に大きな荷物を押し上げるなど想像しがたく、なんとか宇宙と呼べる地上100キロメートル超あたりの高度の弾道飛行をするのがやっとだった。著作から10数年たって、現実は小説を追い越した。

 聞くところによると、今世紀の米国ではNASAの方針の転換などもあり、民間による商業宇宙開発がトレンドになっている。NASAや国防省の計画、あるいは民間の宇宙旅行ニーズに適した、ロケットや宇宙船をみずから開発し、参入しようとする大中小のベンチャー企業が筍のように立ち上がっているそうだ。

 もちろん、航空宇宙に興味のある人たちなら、こういうことは常識なのだろう。ただ小説を書いて以来、ちょっとこの分野と没交渉だったぼくにとっては、非常に衝撃的だった。

2013年1月号特集「果てなき宇宙への夢」
本誌では民間企業が参加する新次元の宇宙開発についてレポートしています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。