第18話 北の漁場の、妄想赤ちょうちん!

 魚網の修理を終えると、私たちはさっそく網を仕掛けに行った。

 なるべく早く漁を行うのは、早くしないと湖が凍ってしまうからと言うよりも、私たちの胃袋が早急に魚のたんぱく質を欲しがっていたからだ。

 ああ、早く魚が食べたい……。

 日本にいると当たり前過ぎて、特別熱望することもない魚への欲求も、ここでは切実な思いである。

 スティーブと共に丘を下りて、湖岸にある倉庫小屋に行くと、彼はおもむろに、クローゼットの中から服を引っぱり出してきて、「これを着て」と言う。

 手に取ってみると、ズシッと重い、分厚い長袖の防寒服で、全体が浮力体になっている極寒仕様のライフジャケットだった。

 海に投げ出されても発見しやすいように、水難救助用の浮き輪と同じオレンジ色でもある。

 以前、フェアバンクスのアウトドアショップで、このジャケットの値札を見たことがあるが、その数字を見た瞬間、息を飲むほどに高価だったのを覚えている。

 そんな値段でも、この厳しいアラスカの環境のなかでは、命に変えられない。