第3回 理想は8時間睡眠もウソだった!

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 さて、ここまでで分かったことを復習。

 睡眠を語るには、体内時計や光の作用で形作られる睡眠のリズムと、必要な睡眠時間を分けて考えなければならない。これにつきる。

 同じ夜12時頃に入眠する人でも、8時間睡眠が必要な人は朝8時まで眠らなければならず、ひょっとしてこの時間の起床では、通勤通学に間に合わないこともあるだろう。その場合は、睡眠不足を蓄積していくことになる。一方、6時間睡眠で済む人は、朝6時には起きて活動できるし、多少、遅寝になったとしても、睡眠不足になるまでにはマージンがある。それはつまり、日中のパフォーマンスが悪くなる前に、立て直せる余裕もある、ということでもある。というわけで、体内時計の周期が長く、長い睡眠を必要とする人は、本当に苦労することになる。

 なお、過度な短時間睡眠は(実は過度な長時間睡眠も)うつ病のリスクを高めるそうだし、不眠にもつながる。眠り、という、ぼくたちにとって日常的な営みは、ひとたび歯車が狂うと、際限なく泥沼にはまるような側面がある。そういうことが誘発されやすい社会環境に、ぼくたちは住んでいる。

 次回は、不眠症について。 

つづく

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。脳病態統合イメージングセンター部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。秋田大学医学部精神科学講座助手、同講師、同助教授を経て、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授。2006年6月より現職。2010年4月より日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員を務める。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider