第3回 理想は8時間睡眠もウソだった!

 よく金縛りになる人がいると思うのだが、あれはレム睡眠の状態だそうだ。レム睡眠の時、頭は結構活発で夢を見やすい。しかし、夢の通りに動いたら大変なので、首から下が動かないようにスイッチがオフになっている。我々の体は、筋肉の収縮で熱を発生させているので、筋肉を緊張させている限りたくさん食べてエネルギーを得なければならない。我々の先祖にとって、食料危機を乗り切る一番いい方法は、とにかく体を弛緩させて、外敵に見つからないようにじっとしていることだったのだろう……というのがレム睡眠の起源ではないかとのこと。人間にとって(もちろん他の動物にとっても)、積極的な適応行動なのだ。

 さて、ノンレム睡眠とレム睡眠の移り変わりのパターンを見ると、レム睡眠はたしかに90分くらいごとに現れるので、その2回目を終えたあたりでちょうど3時間となる。その間、ノンレム睡眠はかなり深い状態が続く(ステージ3やステージ4)。3時間の短時間睡眠で済む人は、ここで効率よく頭も体も休められるのと想像する。もちろん、ほとんどの人は「それ以上」が必要なわけだが。

「燃費の悪い動物ほど長く寝なければならないわけですが、我々人間の中でもそれに近いことがあります。たくさんごはんを食べて運動していたアスリートが、現役引退した途端に基礎代謝が落ちて、睡眠も短くなる。引退がストレスになって眠れないと感じる人もいるんですけど、そうじゃなくて体がエコ型に移行して以前のような睡眠が必要なくなるんですね。高齢者が最たるもので、赤ちゃんに比べて体重あたりのエネルギー消費量が5分の1ですから。世界中の多数の睡眠研究をまとめたメタ解析のデータでも、8時間以上眠れるのは中学生くらいまで。70代になったら、正味6時間くらいしか眠れないし、眠る必要もないんです」(注:もちろん個々人に必要な睡眠時間は、平均値を中心に長短それぞれの方向に分布している。そのことは常に意識する必要がある)