第7話 ニョロニョロ宝地図で、こりゃダメだ。

 犬たちの給食の時間というのは、落ち着きがない。みんな揃って、「いただきます」という訳にはいかないのだ。

 皿にスープを入れた瞬間に、ガブッ、ガブッ。

 食べっぷりがいいというより、急いで丸飲み状態である。

「ゆっくり、よく噛んで食べなさい。丸飲みは胃に良くないよ」
 私の忠告など聞く耳もなく、犬たちはあっと言う間に、皿を空にして嘗め回している。

 あ~っとため息をつきながら、早食い競争化しているドッグヤードの犬たちを呆れた顔で眺めている私に、スティーブが言った。
「橇犬はね、そうやって食べさせるんだよ」
「どうして?」私は、聞き返すと、
「なぜって、早く食べさせる癖をつけないと、冬にはあっという間に餌が凍ってしまうよ。ここは、マイナス40℃以下になるからね」

 マイナス40℃……。
 そうか……、冬はまだこれから。この犬たちは、極寒の世界で生きる犬たちなのだった。

凍る前のミンチュミナ湖。(写真クリックで拡大)

つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/