第9回 眠れない人、眠らない人

ひねくれた不眠症

 ここ何年もの悩みといえば「不眠」である。それについて継続したカウンセリングや治療は受けていないので、本当の「不眠症」なのかどうかはわからない。

 いろいろな本を読むと、そもそも「不眠」の原因や、それ以前の「眠り」のメカニズムがまだ明確にはなされていないようなので、自分のこういう状態がどれほどのリスクを抱えている病的なものなのか、ということについてもよくわからない。

 単に「寝付き」がしぶとく悪い、というだけなのかもしれないが、それにしてはムラが多い。眠れない、ということに神経質になって焦ると精神的にさらに眠りからどんどん遠のいていき、悶絶していくような気もする。一時期はそれが怖くて夜が更けてもベッドに接近するのを意識的に避けているようなときがあった。

 とはいえ眠れなくて悶絶しているうちにもいつしか寝てしまっている。カーテンの隙間から夜がしらじらとあけてくるまで起きていたのを記憶していることも多いから当然起きるのが遅くなる。寝坊である。こういうとき、つくづくモノカキという自由業でよかった、と思う。勤め人だとこんな悠長なことは言っていられないものね。

「不眠」に悩んでいる人は近頃どんどん増えていて、いまは5人に1人はそれに苦しんでいるという。原因はそれぞれだろうが、サラリーマンが多数占めているというからおそらくストレスが大きいのだろう。 

『すばらしい黄金の暗闇世界』
椎名誠著

「好き」と「嫌い」は隣あわせ。世界中の辺境を旅してきた作家、椎名誠の「原点」がここに。書き下ろしを含め、本連載ほか計19本の奇鬼驚嘆痛快話を収録。
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