第3回 それでもマグロを食べますか?

 19世紀、世界の共有地に棲むクジラやアザラシ、海鳥の捕獲(いくら捕ってもタダ!)が急増し、悲劇が訪れた。多くの種が絶滅の危機に瀕し、クジラやアザラシ、野鳥の狩猟を生業としていた者の生活手段が失われたのだ。

 次に乱獲のおもな標的となった海の資源は、魚類と甲殻類だった。魚類の中には19世紀末までにすでに急減していた種もあったが、1900年の全世界の総漁獲量は約300万トンにのぼった。科学技術の進歩や、人口増によるグローバル市場の拡大に伴い、「タダで捕れる」ものを海から手に入れようとする人が殺到しはじめ、それに合わせて「漁獲量」も増えていった。少なくともしばらくの間は。

 ところが第一次世界大戦が終わって数年すると、魚の数が激減し、水揚げも落ち込んでしまった。どうすれば十分な漁獲量を維持できるかと思案するなかで出てきたのが、科学的根拠に基づいて漁業を管理するという考え方である。

 1930年代、このような漁業管理の方策として「最大持続生産量(MSY)」という概念が登場した。この概念では、ある魚が特定の水域内で維持可能な個体数の約半分まで減ると、その繁殖効率は最大になると仮定されている。理論上は、毎年、半数になった魚たちは必要以上の数を生み、その余剰分だけをすくいとっていけば、全体の数は一定に保たれるという考え方だ。

 実に単純で魅力的な概念だったため、MSYは1949年から1955年まで国際的な漁業管理政策の目標に据えられ、国際捕鯨委員会、太平洋まぐろ類保存国際委員会などの漁業関連機関がこぞって採用した。