第4回 ゴリラにみる「イクメンの起源」

 同じ年に開かれた、ジョージア工科大学での「フィールドの動物行動科学連続講座」に出席したことが転機になった。講師のタラ・ストウィンスキーは、連続講義の翌年からカリソケ研究所で「ゴリラのオスの相互行動」の研究を始め、その際、非常に熱心に講義に参加していたステイシーを思い出して声を掛けた。「あなた、アフリカに戻りたいんでしょ。調査助手としてルワンダに来ない?」と。

 ちなみに、ステイシーを誘ったタラは現在、カリソケ研究所の主任研究者になっているのだが、常駐しているわけではなく、普段はアメリカにいる。

 ステイシーは今のところ博士号を取得しておらず、学位論文にするための研究を進めている。初期の研究成果はすでに論文として発表されており(※)、優位のオスが未成熟個体(つまり赤ちゃんやコドモ)の相手をよくすることなど、1970年代からの知見が、群れのサイズが大きくなり、複オスの群れが増えた今もそのまま有効だと裏付けた。

 実はステイシーが学部生時代に研究したワタボウシタマリンは、オス・メス1頭ずつのカップルと子どもたちからなる群れをつくって、オスも育児をするので知られている。ゴリラも、父親は、母親ほどではないけれど、子どもとかかわるので有名だ。だから、彼女にとって、ワタボウシタマリン→マウンテンゴリラという流れは、自然なものだったようだ。

 現在、ステイシーはこのテーマをさらに推し進めて、成熟オスとコドモの関係を、行動だけではなく生理学的な指標を使った評価が出来ないかと考えている。

"Male-Immature Relationships in Multi-Male Groups of Mountain Gorillas", American Journal of Primatology 71:1-10 (2010)