第1回 マウンテンゴリラの赤ちゃんがかわいすぎる件

 彼女は、1985年12月、ここルワンダ、それもカリソケ研究所内で、何者かに殺され今はいない。犯人は検挙されなかった。彼女はファイター型の研究者(?)で、当時多かった密猟者に対して徹底抗戦の立場を取っていたから、恨まれることも多く、その関係で殺害されたのではないかというのがよく聞く憶測だ。

 なにはともあれ、彼女が設立したカリソケ研究所は今も存続しており、マウンテンゴリラを研究し、見守る役割を担っている。ルワンダが1990年代の混乱(後に触れることになるだろう)から立ち直って観光立国するのにも一役買った。

 ぼくの訪問時、研究所で会うことができたのは、日本人を含む3人の「後継者」で、偶然なのか必然なのか分からないけれど、3人とも女性だった。

 3人の女性ということでつい連想するのだが、1960年に古人類ホモ・ハビリスの化石を発見し、時代の寵児となったリチャード・リーキーが類人猿研究の大切さを唱え、フィールドに送り込んだ3人の研究者たち、ジェーン・グドール(チンパンジー)、ダイアン・フォッシー(マウンテンゴリラ)、ビルーテ・ガルディカス(オランウータン)の3人は、すべて女性で「リーキーの3姉妹」と呼ばれた。

 また21世紀の現在、ぼくがこれまで類人猿のフィールドで、出会った研究者は、過半数を遥かにこえて「女性ばかり」という印象を持っている。偶然とは思えないのだが、理由は分からない。

 とにかく、ダイアン・フォッシーが拓き、今も彼女の研究と保護への情熱が受け継がれるカリソケ研究所に行ってみた。

首都キガリ(写真クリックで拡大)

つづく

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合でアニメ「銀河へキックオフ」として放送中。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider