第2回 クジラのいない海

© Image Courtesy of Sylvia Earle archives(写真クリックで拡大)

 20世紀初め頃、多くの人々が、海には魚やクジラなどが永遠に存在しつづけ、その数は無限だと考えていた。

 だが、振り返って考えれば、これが幻想であることを示す証拠は当時も十分にあった。17世紀に北米沿岸水域に生息していた海の生物は、この頃にはすでに激減していた。今日まで存続しているのは、そのさらに一部だ。

 それなのに、私たちが今目にしている現状を、まるでこれまでと何も変わらないかのように、「普通」だと考える人もいる。

 人類は1万年以上も前から、少しずつ自然界を食いつぶしてきた。歴史の大半を通じて、狩猟採集が人間の生存を支えてきたのである。やがて食料源の大部分を耕作や家畜の飼育に依存するようになっても、野生動物を殺す行為はなくならなかった。狩猟本能はそれほどまでに人間に深く根づいているのだ。