第24回 コウモリみたいなチョウ

モンテベルデバイオロジカルステーション
Estación Biológica Monteverde
海外から多くの大学生のグループを受け入れている、授業や研究、宿泊のための施設。ぼくがモンテベルデでねぐらにしている場所だ。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 上の写真は、モンテベルデでのぼくのねぐら「モンテベルデバイオロジカルステーション」。今日は、このステーションの近所の「穴」をねぐらにしている昆虫を紹介しよう。

 その昆虫とは、低地の森からモンテベルデの雲霧林の森へと渡りをするマナタリア・ヘルキナというジャノメチョウの仲間。

 昔は、ステーションの近くの林道をちょっと歩くだけで、人間の気配に反応したチョウたちが、コウモリの大群のような勢いで、ううわっ!と目の前に飛び出してきて、よくドキッとさせられていた。でも、近年はその回数が減ってきているような気がする。

 ステーションの建物や森のメンテナンスをされているエイリエンさんに尋ねた。「集まって休んでいる茶色いチョウを林道沿いで見ていませんか?」

 エイリエンさんは、ステーションから少し離れた場所2カ所が確認できていると教えてくれた。そのうちの1カ所へ、チョウたちに会いに向かった。

 チョウたちが驚いて飛んでいかないように、抜き足差し足忍び足。木の根の下、土手の陰になった穴に・・・いた。50匹ほどの集団だ。

 日中、このチョウは日陰になる小さな洞穴のような場所に目立たないように集まっている。太陽が沈むと飛散し、近くの木々の葉の上にとまって夜を過ごす。そして早朝にねぐらへ戻る。そんなところも、ちょっとコウモリ的だ。

 雨季に入る4月から5月ごろになると、繁殖をするために、再び低地の森へ飛び立ってゆく。その渡りの飛行も夕暮れから夜にかけて行われる。

マナタリア・ヘルキナの集まり
An aggregation of White-spotted Satyr
露光を長くして、明るめに撮影した。三脚なしだったので、100回以上シャッターを切った。10年ぐらい前に80匹ほどの集まりを確認したが、今回は50匹ほどのものだった。低地の開発で、繁殖できる場所が減ってきているのかもしれない。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
ねぐらから飛び立つ
Flying out from the roost
繁殖しない間、マナタリア・ヘルキナは森にやってきて、土手の穴(左下の白い丸の中)に目立たないように集まっている。ちょっと驚かせ、飛び去るところを撮影してみた。白い丸の中と矢印の箇所に、コウモリのように一斉に勢いよく飛び去るのが写っている。5枚の写真を合成した。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
マナタリア・ヘルキナ(タテハチョウ科:ジャノメチョウ亜科
Manataria hercyna maculata
右写真、翅の裏には、たくさんの丸い目玉模様がついている。左は表側。これは低地で飼育した個体の標本。
前翅長 40-45 mm 撮影地:サン・ホセ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html