第3回 引き揚げ遺品で汚名返上
――RMSタイタニック社に正文さんの手記を預け、その調査によって新たにわかったのは、どのようなことだったのですか。
実際はどういう集団か、得体の知れないところがあったのですが、調査はしっかりしたものでした。学者もそろっていましたしね。
当時の証言や資料をいろいろ集めてくれて、それでわかってきたことがいくつかあるんです。
たとえば、それ以前は祖父がどの救命ボートに乗っていたのかが、はっきりしませんでした。そのせいで「他人を押しのけてまで」といった風評が立ったところがあるようです。しかし、RMSタイタニック社の調査で、祖父が10号ボートに乗っていたことが判明しました。
10号ボートの船員が、乗っていたのはアルメニア人が2人だと証言したために、祖父の存在が不確かだったのです。ところが、そのアルメニア人が後に回想録を出していることがわかって、日本人と一緒にボートを漕いだと書いていたんです。祖父はアルメニア人と間違われたのでしょう。
2012年4月号特集「タイタニック 沈没の真実」
本誌でもタイタニックの特集を掲載しています。フォトギャラリーやジェームズ・キャメロン「タイタニックの船内を巡る」などもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。