第4章 1921-1956 カラー革命と第一期黄金時代

第4回 トンパ文字とシャングリラ

ロックが撮影したチベットのシャーマン。彼は礼装すると悪霊にとりつかれると信じられていた。僧たちが経を唱えると唾をはき、うめき声を上げて全身を痙攣させると、矢を放ってほかの悪霊を退治した。1935年10月号より。(c)Joseph F. Rock (写真クリックで拡大)

 中国の奥地が気に入ったロックは、雲南省から戻ってほどなくトンパ文字の翻訳にとりかかります。また、27~30年にも現地に滞在し、ビルマ(現ミャンマー)とチベットに接する山岳地帯から、1000キロ以上も北にあるゴビ砂漠や内モンゴルの近くまで遠征しては現地からナショジオに記事を送りました。

 で、さすが100万部雑誌。この記事が思わぬところにまで影響をおよぼします。ロックの冒険談を読んだイギリスの人気作家、ジェームズ・ヒルトンがチベットを舞台にした冒険小説『失われた地平線』を上梓し、大ベストセラーとなりました。その架空の理想郷が「シャングリラ」というわけです。

「シャングリラ」といえば、いまや「理想郷」の世界的な代名詞。そして、ちょっと前に日本でもブームとなった「トンパ文字」。一見、なんのつながりもなさそうな2つですが、実はいずれもジョセフ・ロックという人物と『ナショナル ジオグラフィック』が深く関わっていたのです。こんど「トンパ文字」と「シャングリラ」という言葉を耳にしたときは、ナショジオを思い出してくださいね。

 なお、ジョセフ・ロックが書いたトンパ文字の辞書は彼が亡くなった直後に出版されました。波乱万丈の数奇な生涯を送ったロックに興味をもたれた方は1997年1月号特集「ジョセフ・ロックの中国探検」をぜひお読みください。

つづく

(Web編集部S)