第4回 車は危険! すぐに高台かビルの上階へ

 ぼくはかつてテレビ局の報道記者をしていたことがあり、国内外の地震や火山噴火など、自然災害の現場に派遣されることがよくあった。災害で亡くなった方や遺族に対して、取材者として相対する時、本当になんとも言えない悔しさ、無念さ、不条理さを感じたことは忘れられない。

 おそらくこれは、巨大な自然災害の現場に足を踏み入れたことがある人なら、誰でも感じることではないだろうか。今村さんが、防災にかかわる津波工学を志した原点にも似た感覚があったようだ。

(写真クリックで拡大)

「大学4年生のときに、秋田で日本海中部地震津波がありました。わたしは土木工学の研究室にいましたので、災害現地調査に連れていってもらいまして、現場でものすごい状況を目の当たりにしたんです。まだ、ご遺体の捜索をされていて、あのような形で人命が失われることがいかに悲劇であるか痛感しました。津波研究をしたいと思った原点です。人間は必ず亡くなるわけですが、大災害においてはあまりに突然です。将来への希望ですとか、考えていたことが、いきなり、失われる。一番悲惨なのは、やっぱり家族で、一部残って、一部亡くなってしまって、今までのつながりが完全に途絶えてしまって……そして、生きのびた側には、ああしていれば、こうしていればと悔いばかり残ってしまう。その後悔は、家族だけでなく、地域にも残る……その悲劇や悔い。そういったものを少しでも無くしたいというのが一番ですね」

2012年2月号特集「津波 そのメカニズムと脅威」
本誌でも世界の津波の記事を掲載しています。フォトギャラリーもあるWebでの記事の紹介はこちら。ぜひあわせてご覧ください。