第3回 パーソナリティも遺伝で決まる?

 空間性にかんする知能テストについては、遺伝要因がなんと70%になった。ここまで来ると、人間の空間認識能力は遺伝によってだいたい決まってしまうのではないかとの印象を受ける。中学生時代、数学の幾何の分野がどう勉強しても苦手で、高校でベクトルや座標を使ってゴリゴリ計算して同じ問題が解けることを知った時、とたんに楽になったぼくなど、ああそれは遺伝のせいかと納得してしまう。

 一方、言語性にかんする知能テストは、遺伝要因が14%と小さく、残り86%が環境要因となった。家族の中で交わされる会話や、両親の読書習慣などが影響するのだろうか。

 さて、様々なパーソナリティや知能について、双子研究で「遺伝の影響」が測定でき、同時に「環境の影響」が測定できることが分かった。すると、「すべての面に遺伝が影響する」ことをことさら大きく見て、こういった研究が優生思想的な発想と結びつきやすいのでは、と懸念を抱く人もいるだろう。

 それについてはどう考えればいいのか。

つづく

安藤寿康(あんどう じゅこう)

1958年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部教授。教育学博士。専門は行動遺伝学と教育心理学。遺伝と環境は、人間にどう影響しているのか、科学的な解明を目指して研究を続けている。主な著書に『遺伝マインド』(有斐閣)、『遺伝と教育――人間行動学遺伝学的アプローチ』(風間書房)、『心はどのように遺伝するか――双生児が語る新しい遺伝観』(講談社)などがある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン──銀河のワールドカップ・ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合で「銀河へキックオフ」としてアニメ化される。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider