はるか極北の地で、ツンドラの大地を季節ごとに移動し、トナカイを追って暮らしてきたサーミの人々。伝統がはぐくんだ文化への愛着は強いが、今では遊牧生活を続ける人は少なくなっている。

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遊牧の民 サーミ

はるか極北の地で、ツンドラの大地を季節ごとに移動し、トナカイを追って暮らしてきたサーミの人々。伝統がはぐくんだ文化への愛着は強いが、今では遊牧生活を続ける人は少なくなっている。

文=ジェシカ・ベンコー  写真=エリカ・ラーセン

 ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、ロシアの北部にまたがる北の大地で、サーミの人々はトナカイを遊牧して暮らしてきた。

 冬は内陸の山岳地帯に広がる高原で過ごし、短い夏の数カ月間は沿岸部、フィヨルド高地の放牧地へ。トナカイの群れとともにツンドラを季節移動する遊牧の暮らしが、サーミ人独自の文化をはぐくんできた。

 トナカイたちは持ち前の俊足で、主食のハナゴケを求めてツンドラを何百キロも移動する。広大な放牧地でテント暮らしをしながらその群れを追う暮らしは、決して楽なものではない。サーミの伝統と文化への愛着はやみがたいが、一方で、各国の政策や外来の文化による影響もあり、遊牧生活を続ける家族は時とともに減っている。

 今もトナカイの遊牧を続けるサーミの人々を取材し、日々の情景と彼らの思いを伝える。

編集者から

「ラップランドのおみやげだよ」。子どものころにもらった人形の記憶が不意によみがえりました。鮮やかなブルーに赤や黄色のふちどりの服は、本誌89ページの写真(ウェブのフォトギャラリーでは、11枚目に掲載されています)とそっくり。あれはサーミの民族衣装だったんですね。

 特集の写真は、本誌「もっと、ナショジオ」にも登場している写真家エリカ・ラーセンが、サーミの人々と生活をともにしながら撮ったものです。資料を探していて1992年発行の『遊牧 トナカイ牧畜民サーメの生活』(筑摩書房)という本に出会い、今から約40年前、同じように彼らのもとに身を寄せたフィールドワーカーがいたことを知りました。著者の鄭仁和は、「金がないなら雇われればいいんや。衣食住つきで教えてくれるで」という梅棹忠夫の示唆を受けて1967年、ほぼ1年間の遊牧生活に身を投じます。一つまちがえば命を落とす極寒の地で、熱いコーヒーをすすって体をあたため、群れを追って駆けずり回る遊牧の日々が臨場感たっぷりに伝わってきました。(編集H.I)

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