第4回 雨季の到来。天井から降ってくるのは・・・・・・

ウンボニア・クラシコルニス(カメムシ目:ツノゼミ科)
Umbonia crassicornis
バラノトゲツノゼミの一種で、ツノゼミの中では大きいほうだ。トゲのない枝に群れて、じっとして動かない。植物にトゲになりきる。群れのなせる技だ。なりきり擬態とでも呼ぼう!
体長:10 mm  撮影地:サン・ホセ、コスタリカ

 コスタリカ、イラス火山のふもと、標高1420mにあるコロナドという小さな町で、古くて薄っぺらい木造の家を借りている。前の道路を大きな車やトラックが走ると、震度1~2の揺れを感じるような家だ。バイクは轟音を立てて走り去り、隣の家の犬たちは無駄吠えをよくするし、だいぶ住み心地は好ましくない。そんな生活も学者貧乏ならではなのだが・・・・・・ぼやいても始まらない。

 さて、雨季が始まった。この時期、コスタリカでは天気予報はあまり意味がなくなる。午後になると必ずといっていいほど、毎日雷雨に見舞われるからだ。  大粒の雨がダーッと降ってきて、トタン板1枚の屋根をバシバシと響かす。ラジオは聞こえなくなるけれど、周りのうるさい音もかき消してくれる。車の騒音に比べれば、屋根を叩く雨音のほうがよっぽど気持ちいい。

 今のところ部屋に雨は降ってこない。豪雨でも、洗濯場が少し雨漏りするくらいだ。けれどこの部屋には、雨季、乾季を問わず、天井や壁の隙間から降ってくるものが2つある。ひとつは天井裏に降り積もった火山灰。1963年から1965年にかけて噴火したイラス火山の灰だ。もうひとつは、シロアリの糞。24時間休むことなく、ポロポロ、ポツポツと降り続けている。

シロアリの一種の糞(シロアリ目)
Termite fecal pellets
ポロポロ、ポツポツと降りつづけるシロアリの糞の粒つぶ。乾燥していて、軽く、落花生の殻のようだ。同居する小さな蛾の幼虫が、サナギの繭をつくる際にこの落下糞を利用していた。なるほど、これは蛾の飼育のときに役に立つ!それ以来ぼくは、落下糞を集めている――家はスカスカになりつつあるが・・・・・・
大きさ:0.5 mm  撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html