第3回 皇居の桜田濠でもマイクロプラスチック汚染

 マイクロプラスチック問題をめぐる大きな流れを見てきた。

 高田さんは90年代からこの流れの中で研究をし続けてきたわけだが、具体的にその研究はどんなふうに行われるのだろうか。大学にお邪魔しているわけだから、その点についても見せていただかない手はない。

高田秀重さんが教授を務める東京農工大学。
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 まず、よくある「化学者のイメージ」とはどんなものだろう。ぼくの頭にぱっと浮かぶのは「白衣に試験管」や「白衣にフラスコ」といった姿だ。これはステレオタイプな「サイエンティスト像」そのものかもしれない。ネットで利用できる写真素材提供サービスなどを見ていても、「科学者」のカテゴリーにこういった写真やイラストがふんだんに用意されている。

 ところが、高田さんの研究は、そんなステレオタイプとは別のところから始まる。

 始まりは、常にフィールド。「現場百遍」を合言葉に、みずから現場でサンプルを取得するのが流儀なのである。日本だけではなく、ベトナム、ラオス、カンボジア、マレーシア、インド、ガーナ、ケニア、南アフリカ、モザンビークなど、世界中のあちこちに自ら足を運び、サンプルを取得してくる。その行動範囲は、ぼくが密かに「インディ・ジョーンズ系」と呼ぶタイプの研究者のものだ。

 ここでは、最も身近なフィールドの一つである東京湾の海底の泥を採取するところから始める。

東京湾で堆積物コアを採取する高田さんとそのチーム。(写真提供:高田秀重)
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「2年に1回ぐらいですが、東京海洋大学の船で東京湾の底の泥、堆積物コアを採取しています。内径11センチのパイプに、1枚10数キロのおもりを2つつけて、船の上からゆっくりとワイヤーを使って海の底に落とすと、パイプが海底に突き刺さります。パイプには逆流防止の弁がついているので、中に入った堆積物を引き上げることができます。東京湾は、場所によりますが、大体平均で1年に1センチずつぐらい泥が積もっていきます。ですので、1メーターとれたとすると、まあ100年分ぐらい。それを船の上でスライスするんです。下から棒で突き上げて、上に出てきたものを2、3センチごとに切り分けていきます」

 揺れる船上で、これはかなり熟練とチームワークが必要な作業だ。1メートルで100年、1センチで1年。堆積コアに詰まった情報をダメにしないように、6人がかりくらいで慎重に作業を進める。

 その時、高田さんは、採取した現場の様子を自分の目や鼻、耳などで感じて頭に刻み込んでおくことを推奨する。よそからサンプルをもらって分析をするのでなく、自分で取りに行く、というのはそういうことだ。