昼に活動するガ、ヒロオビトンボエダシャク。公園や緑の多い住宅地など、身近なところでも見られる(写真提供:神保宇嗣)
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 ガを研究していると自己紹介すると、「チョウとガはどう違うのですか」という質問をよく受ける。これはなかなか答えるのが難しい、回答者泣かせの質問だ。

 日本では、チョウとガは完全に別の生き物のような扱いを受けており、チョウは昼間活動するきれいな虫といったプラスの印象、ガは夜に活動するあまりきれいではない虫といったマイナスの印象とともに語られることが多い。触角の形や止まる姿勢なども、チョウとガを区別する方法としてしばしば紹介される。

 確かに、今あげたような区別点は、チョウやガの大部分に当てはまるが、どうしても例外があるため決定的ではない。特に、昼間に活動するガの仲間は、チョウのような派手な色や斑紋を持った種類が数多くいて、チョウとガがそっくりな斑紋をしていることすらある。いろいろなチョウとガの標本を数個体ずつ取り混ぜてお見せし、チョウとガに分けてみて下さいというクイズをしたことがあるが、全問正解したのは、本当にチョウやガのことを詳しく知っている方々だけだった。

 そんな詳しい方々も惑わす存在に、シャクガモドキという、生物分類学上チョウに含まれる仲間がいる。生物分類学上とわざわざ書いたのは、成虫はどうみてもいわゆるガのような姿をしているからだ。実際、長らく、この仲間はシャクガというガの仲間と考えられてきた。

 しかし、1980年代中盤に、この仲間をチョウとするという説が発表され、少なからぬインパクトが与えられた。以来、形だけでなくDNAを使った研究も進み、シャクガモドキはたしかにチョウに含まれることがほぼ明らかになっている。

 標本を見るとガのような姿形をしたシャクガモドキだが、生きているときはどんな感じに見えるのだろうか。そんなことを長らく考えていたところ、昨年、特別展昆虫の取材のためアマゾン地域へ行くことになった。シャクガモドキを見る絶好の機会だ。

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