昆虫採集兵器ノムラホイホイ(野村周平/甲虫研究者)

ノムラホイホイの成功

 このようにして完成したノムラホイホイを、福岡市元岡はもちろん、九大の周辺ばかりでなく日本各地で使ってみた。そうして使っていくうちに、このトラップが時としてすごい効果を上げることがわかってきた。何しろあらゆる種類の昆虫を捕獲できるのだ。そればかりではなく、トラップに入った虫はほとんど死ぬことがなく、生きたままの状態で捕獲できる。そしてしばしば、信じられないほどの数の虫が入る。

ノムラホイホイで採集された昆虫たち(写真提供:野村周平)
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 北海道では、北日本特産のゲンゴロウモドキ2種やメススジゲンゴロウを多数採集した。東京にほど近い山梨県の山間部で使ってみたところ、ミヤマクワガタやアオカナブン、コクシヒゲハネカクシなど東京の平地では見られない種が入った(図2A)。奄美大島で腐肉(トリガラ)を使って、オオツヤシデムシやネパールモンシデムシを採集した。

 海外でも赫々たる成果を上げた。何度も訪れたベトナムの採集旅行では、オサムシ類やカナブン類を多数採ることができた。また、ファーブル展の取材で訪れた南フランスの山中でノムラホイホイを仕掛けた際には、何が入るのか想像もつかなかった。実際に回収してみると、バナナトラップにはカナブン類とともに、大量のカシミヤマカミキリ類3種が入っていた(図2B)。

 ノムラホイホイは元々、インベントリー調査の中から創意されたものなので、野村が携わった皇居の生物相調査(図2C)や、東京港野鳥公園の調査(図2D)でも大活躍した。インベントリーとは、一定の地域の中にどれだけの生物がいるのかをリストアップし、地域間で相互に比較する、生物多様性の研究手法である。ノムラホイホイは、現在実施中の目黒の自然教育園(東京都港区白金)のインベントリー調査でも実績を上げつつある。これら都区内の緑地は普段、昆虫採集が禁止されているエリアなので、いずれも許可を受けて実施している。

各地でノムラホイホイによって採集された昆虫.A:山梨県小菅村;B:フランス南部ラングドック県;C:皇居吹上御苑(調査時);D:東京港野鳥公園(調査時)(写真提供:野村周平)
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