第5回 「ゲリラ豪雨」の被害をできるだけ避けるには

「結局、山地での研究につづいて、他の場所でも、気温や風、水蒸気の観測を高密度・高頻度にとっていくというのが今やっていることです。特に水蒸気の観測って今、注目されていますね。雲って水蒸気がベースになってできるわけですが、レーダーで観測できるのは、雲の中で水滴や氷の粒が成長した後なんです。水蒸気の状態では見えません。だったら、その雲になる前の水蒸気がどの高さにどのくらいあるのか。マイクロ波放射計を使って観測して、積乱雲の発生前からの予測をしようというのが、今、私がやってる取り組みですね」

 マイクロ波放射計というのは、レーダーのようにみずから電波を発して反射波を見るのではなく、水蒸気、酸素、雲水などが発している放射(電波)を観測して、水蒸気分布や気温分布を求める。この方法自体、荒木さんたちのチームが開発して、良好な結果を得ている。前述の山地での積乱雲の研究や、2012年につくば市で起きた竜巻を観測して、その竜巻を生んだ積乱雲の発生環境について観測値を得るなど世界的にも貴重な知見を生み出している。

 なお、それは今、荒木さんの研究室の建物の屋上にあるのだが、観測をするために、荒木さんが日々、戦っているのは、なんと、カラスだ。

カラス対策が施された気象研究所のマイクロ波放射計。(写真提供:荒木健太郎)
[画像のクリックで拡大表示]

「特殊なセンサーを包むドームに、特別な柔らかい素材を使っているんですけど、そこにカラスが穴を開けちゃうんです。そこから雨水が入ると故障の原因になってしまって、馬鹿になりません。1台数千万とかするんで。それで、トゲトゲをつけてみたり、釣り糸を張ってみたり(笑)。この釣り糸がわりと効果があって、今は大丈夫なんですけど」

 様々なレベルでの苦労がありつつも、精緻な観測ができるようになって、やがて予測可能なものになっていくというのはたのもしい。

 もっとも、それだけではダメだと荒木さんは強調した。