第5回 「ゲリラ豪雨」の被害をできるだけ避けるには

 こういった大雨の原因となるのは積乱雲だ。1つの積乱雲の寿命はせいぜい1時間ほどで、もたらす降雨は数十ミリくらいだから、局地的大雨は1つの積乱雲でもその原因たりうる。一方で、何時間にもわたって100ミリを超えるような雨を降らすには、複数の積乱雲が組織化しないと無理だ。

「1時間に100ミリメートルの雨って、想像できますか」と荒木さんは言った。

「1時間の間に100ミリメートル、つまり、10センチの水が溜まるということですから、1メートル四方あたりの重さとしては100キログラムです。つまり、1時間に一度、体重100キロの小ぶりな力士が落ちてくるのと同じだと考えてください。その雨の中では、もう視界を奪われて、雨滴が地面を叩きつける轟音以外聞こえなくなります。滝の中にいるような圧迫感だとよく言われますね」

 1メートル四方の地面に、小ぶりながら立派な力士が降臨する姿を想像すると、なにやらものすごいことであるのはよく分かる。それも隣の1メートル四方にも、またその隣の1メートル四方にも同じように降ってくるのである。恐ろしい。

1時間に100ミリメートルの雨のイメージ。(『雲を愛する技術』(光文社新書)より)
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「局地的大雨も集中豪雨も、局地的な現象ですから、たしかに予測は難しいんです。今は、予測に成功することもありますが、でも、予測できないことも多いので、精度を上げていくのはやはり大事です。積乱雲ができるには、下層の空気を持ち上げるメカニズムが必要です。このメカニズムにもいろいろありまして、まずは関東地方の話をしましょう」

 具体例に入る前に注釈しておきたいのだが、積乱雲というと「夏休みの象徴」ともいえる入道雲を想像する人が結構いるようだ。しかし、ちょっと違う。入道雲は雄大積雲のことで、積乱雲の弟分だ。入道雲がさらに成長して、雲頂が成長限界(対流圏の界面)に達すると、横に広がりだして「アンビル」という構造を見せたり、高空のジェット気流の影響でてっぺんが毛羽立ったり、吹き飛ばされた氷晶からなる巻雲を伴ったりするようになる。この規模になったところで、積乱雲と呼ぶ。坊主頭の入道雲には、まだまだ上に成長の余地がある(なお、積乱雲になっても、頭がてらっとした「無毛」のままの場合があるので、入道雲だと思っていたら、実は成熟した積乱雲だったということもありうる。ここでは入道雲=積乱雲ではないと知ってもらえればよいと思う)。

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多毛積乱雲(左)と、積乱雲の弟分である雄大積雲(右)。てっぺんの形に注目。積乱雲では雲頂はだいたい横に広がり、鍛冶で使う作業台の「アンビル(かなとこ)」に似る。雷やにわか雨、雹などを伴うのも特徴。対して、雄大積雲のてっぺんあたりはカリフラワーのような形をしており、雷や雹は伴わない。(写真提供:荒木健太郎)

 いずれにしても、こういう雄大積雲や積乱雲は、下層の大気がなんらかの原因で持ち上げられて、持ち上げられた先の周囲の大気との関係で、自ら上昇し始めることで始まる。最初の上昇のきっかけは外から与えられる必要があり、それを「対流の起爆」と呼んでいる。起爆が起これば、その後、積乱雲は自ら成長していく。

 起爆の原因となりうるのは、こんなふうだ。