ハイフンの見落としで打ち上げ失敗… NASAの教訓

惑星探査機マリナー1号、2号の外観(イラスト:NASA)
[画像のクリックで拡大表示]

 発見と探査の歴史に多くの不運な事故があったことは言うまでもない。たとえばロバート・スコット隊長(南極点到達)、ジョージ・マロリー(エベレスト登頂を目指す)は、文字どおり前人未踏の地への到達に命を捧げた。

 宇宙への挑戦も同じことだった。規模や死者数はさまざまだが、これまでにいくつもの災難が起きている。その中には、コンピュータープログラムにおけるたった1つの「ハイフン」の見落としが、莫大な予算をつぎ込んだロケットの打ち上げ失敗を招いた例もある。米航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「マリナー1号」の打ち上げ事故だ。

 「抜けていたハイフン」の物語は、ナショナル ジオグラフィックの書籍『失敗だらけの人類史 英雄たちの残念な決断』(ステファン・ウェイア著)にも取り上げられている。身の回りのあらゆる機器、機械、インフラがコンピューターによって制御されている現代、この失敗は、プログラマーのみならず万人への教訓となりうるだろう。

初めての惑星探査

 1950年代後半、米国とソ連の宇宙開発競争が始まると、NASAのジェット推進研究所(JPL)は、大型で高機能を誇る一連の惑星探査機「マリナー」の壮大な計画を立案した。これほど大きな探査機の打ち上げは、新型の強力な打ち上げ用ロケット「アトラス・セントール」の開発にかかっていたが、これは厄介で多額の費用が必要となりそうだった。

マリナー1号の打ち上げの様子(写真:NASA)
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで、最終的にはマリナーの機能を減らして装備も必要最低限に抑えるしかなく、打ち上げも、すでにある打ち上げ用ロケット「アトラス・アジェナB」で行うことになった。このようなコスト削減にもかかわらず、マリナー計画の規模は5億ドル以上に膨らむこととなる。

 金星を目指したマリナー1号は、米国が初めて地球以外の惑星へと送り出す無人探査機だった。動力供給を補助する太陽電池パネルが取り付けられていたほか、目的地の金星を調査するための機器を搭載していた。この探査機はアトラス・アジェナBによって、1962年7月22日に打ち上げられた。

次ページ:プログラムミスとテスト不足

おすすめ関連書籍

失敗だらけの人類史

英雄たちの残念な決断

人類が犯してきた失敗の数々をアダムとイブまでさかのぼって検証した書。聡明で経験豊かなリーダーたちは、なぜ判断を間違えたのか。

定価:本体2,600円+税