第5回 世界をきれいにするカラス、自然の物に巣をかけないツバメ

「ふと考えてみると、僕がやっているようなフィールド、それも無人島の生態系で、今、新たに1種絶滅しようが、それどころか島ごと沈んでも、多くの人には影響はないんです。でも、そこで面白いことがたくさん起きていると分かってきているわけですよね。知ると、みんな喜んでくれる。面白いと思える。人間の生活の中の楽しいところっていうのは、そういう役に立たないことじゃないかと僕は思っていて。新聞の紙面を見ると、古墳時代の遺跡から土偶が出たとか、恐竜のこんな骨が出てきたとか書かれているわけです。誰の役にも立たないけど、見るとみんな嬉しい。『えっ、すごいな』って思える。それが、学問の楽しみの最たるものじゃないですかね。僕らがやっている生態系の保全っていうのもまさにそうです。将来の世代のために、新たな面白いことが分かってくる場所として、未来永劫残していくのが責任だと思うんです」

 なるほど。「生態系を護る」ことの意義については、様々な理論づけがある。でも、その中の大事なことの1つとして、「面白い」や「すごい」はとても重要なことなのかもしれない。

鳥の標本収蔵庫を案内して、すごい鳥を紹介してくれた川上さんは実に楽しそうだった。
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 そこで思うのだが、川上さんたちが離島のフィールドで実践している「面白い」「すごい」を見出す方法は、ひるがえってぼくたちの日常生活でも役立つときがあるだろうか。都市にも鳥はいるし、それを見て背後のストーリーに思いをいたせば、とても「面白い」ことにならないだろうか。

「たしかに、狭くて小さい島は、生態系がすごく単純化されていて、関係がシンプルに見やすいからは研究しやすいといえるんですけど、実は都市も同じなんです」

 川上さんは意を得たりというふうに言った。

 都市と離島は、ある面で似ている。都市の生態系は周囲と分断されていてちょっと島的な状況になっており、その中の物質循環も独特なものになっている。それが多少、歪んだものだったとしても。