第5回 世界をきれいにするカラス、自然の物に巣をかけないツバメ

 2013年、東京都西之島の南西海域で大きな噴火があり、2年間にわたって多量の溶岩をふき出した。やがて、西之島自体が溶岩に飲み込まれ、もともとの島の地面が残されたのはわずか0.01平方キロメートル、せいぜい1ヘクタールに満たなかった。当然、溶岩の下になったところに成立していたはずの生態系は壊滅した。残されたわずかばかりの地面も火山灰におおわれた。

 西之島は、1973年に噴火した後の生物相の変化が注目されており、すでに鳥類相や植物相が調べられていた。そのような島で、いったん生態系がリセットされるほどの災害が起き、さらにその後の推移を観察できることになった。それゆえ、西之島は「絶滅と移入」が宿命である島の生態系について新たな知見をもたらしうるフィールドとして、世界の注目を浴びている。

西之島。2016年5月20日撮影。(出典:海上保安庁)
[画像のクリックで拡大表示]

 さて、それでは、溶岩と火山灰に覆われた西之島では、どのように新しい生態系が始まろうとしているのだろうか。川上さんと話す前なら、ぼくは確実に、まず植物が生えてくるのではないかと思っただろう。そして、流木にくっついてきた昆虫なども定着して……というふうに生態系のメンバーが徐々に揃っていくイメージだ。

 そのように言ったところ、川上さんの目がきらーんと光った。

川上和人さんは西之島の調査も続けている。
[画像のクリックで拡大表示]

「そうですね。そう思う人が多いと思います。でも、植物が育つためには土壌がないといけないですし、何より種子を持っていかないといけない。でも、海鳥はというと、海で食べ物を食べて陸で巣をつくるので、陸上に何も期待してないんですよね。大地さえあればいい。種類によっては、巣材すら必要なくて、何もないところにコロンって卵を産んじゃうのもいるので。そして自分で自発的に移動できるので、噴火から逃げても、落ち着けば戻ってくることもできる。そういうふうにやっていけるのは海鳥だけなので、彼らがいることによって、今後、生態系がどんどん変わっていくと思うんですよ。それを見ることで、本当に彼らが果たしている機能がクリアにわかると思います」