第3回 外来種の駆除を保全の目的にしてはならない理由

 なお、生態系の保全や回復は、「絶滅危惧種の保護」とセットで語られることが多い。小笠原の絶滅危惧種には、鳥類ではメグロ、アカガシラカラスバト(愛称アカポッポ)、オガサワラノスリ、オガサワラヒメミズナギドリ、オガサワラカワラヒワなどがいる。これらのうち、メグロは川上さんが学生時代に研究していた原点の鳥で、オガサワラヒメミズナギドリは既に絶滅しているのではと心配されていたものを川上さんたちが2012年に再発見し、話題になった。

絶滅していると考えられていたオガサワラヒメミズナギドリ。おとなの体長は30センチほど。川上さんらが2012年に再発見した。そのくだりは『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』に詳しい。(写真提供:川上和人)
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 絶滅危惧種が危機にある理由の1つには、島に入ってきたネズミやネコやヤギなどの「外来種」によって生息環境が変わってしまったり、捕食されたりしたことが挙げられる。考えてみたら、種としての絶滅ではなくとも島から海鳥がいなくなるのは、ローカルな個体群の絶滅には違いない。だから、絶滅危惧種を守り、生態系を守りたい時に、外来種は「絶対的な悪」に見えがちだ。しかし、川上さんの話では、外来生物が入った生態系も、目くじらを立てなくともよい場合がある前提で話が進んでいるのだった。

「外来生物を取り除くこと自体が目的になるのはダメだというふうに考えています」と川上さんは言った。

「ちょっと前まで、外来生物を取り除くこと自体が目的化していたところがあるんですけど、実はそれは単なる手段であって、手段として外来生物のコントロールをするんだという認識は共有できるようになって、悪夢のような時代は終わったと思います。もちろん、侵略性を発揮していない外来種は、そこまで手が回らないっていうのが一番大きいんですけどね。でも考えてみてください、絶滅してしまった生き物がいた生態系などでは、その機能を別の生き物に担ってもらわないと生態系の復元もできないんです。外来生物が在来種を脅かさずに新しい生態系の中で役割を担っているなら、それはよしとしなければならないことがありますね」

 川上さんはいみじくも「悪夢のような時代」と言った。生態系の保全や復元をする際、厄介者の外来生物を駆除すると、意外な副反応があり、別のひどいことが起きるような例が、これまで世界中で起きてきたからだ。