第3回 外来種の駆除を保全の目的にしてはならない理由

 一見、豊かに見える森が「海鳥が絶滅したバージョン」で、オリジナルは、「踏み荒らされた」、つまり荒れて見えるものだったというのだから、大変な違いだ。これはおそらく、島の生態系についての考え方を大きく変えるものだ。知らなければ、ぼくたちは、まず「うっそうとした森」の方が豊かであり、かつ、オリジナルだというふうに想定しがちだからだ。川上さんたちが、南硫黄島での知見を得てから、あらためて他の島を見てみると、これまで原生の度合いが高いと思われていた森も、実はそれほどでもないと明らかになってきたケースがある。

「たとえば、母島の石門という場所です。母島はもちろん人が住んでるんですけども、そこはあまり人の手が入っていなくて、原生の状態が比較的残ってると言われてきたんですね。実際に、植物はそうなんですよ。戦前、母島は、皆伐されてサトウキビ畑にされたところが多かったわけで、今、島がまた森に覆われていても、そのほとんどは1回開発されてから回復した二次林です。でも、石門は森林がそのまま継続して残っていますから。では、生態系としてはどうかというと、僕から見ると変わってしまっていて、そもそも海鳥の一大繁殖地だったのに、それが取り除かれて、物質循環が変わっているんです。みんなが持っていたイメージと違うけれど、そういうことが分かってきています」

「うっそうとした森」は豊かだとぼくたちは想定しがちだが、そう単純な話ではなかった。
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 そして、これはイメージの問題だけではなく、自然環境の保全にまつわる実務的な部分に大いに影響してくる。そういう意味でも重要な意味合いを持っている。

「保全って目標がないとしんどくて、本来の生態系がどうだったのかを知るのはそういう意味で大切です。例えば、生態系の回復プロジェクトとしてやっている聟島(むこじま)列島での実践を通して、外来のヤギを駆除するとどういう海鳥が戻ってくるか、ネズミを駆除するとどうかといったことが分かってきているんですけど、かといってすでに絶滅した種もいますし環境も変わってしまっているので完全に元通りには出来ません。だとしたら、そこに出来ている生態系がちゃんと本来持っていた機能が揃っていて、今、絶滅せずに残っている在来の生物たちが維持できるのであれば、次善の策としてオリジナルの状態でなくともいいと思うんですよね。でも、リファレンスとしてオリジナルを知らないと、目指すべき状態になっているのか判断できないですよね」

 リファレンスを得るというのはとても大事で、「生態系の機能」と言った時に、このあたりではどんな生き物がどんな役割を果たしていたのかということも分からなければ、計画すら立てられないということか。