春の山林に響く 100ヘルツの重低音

母衣打ちをする雄。母衣とは武士が矢などを防ぐのに用いた風船のような武具で、大きく膨らんだ胸から連想したのだろう。(Photograph by WADA GOICHI/NATURE PRODUCTION/amanaimages)
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ヤマドリの母衣(ほろ)打ちの音を聞いてみよう。(音声提供:松田道生)

「これがヤマドリ?」。このシリーズで鳴き声などの提供をお願いしている、日本野鳥の会理事の松田道生さんから送られた音声ファイルをパソコンで再生したときだ。聞こえてきたのは甲高い鳴き声。写真で見た、あのずんぐりした鳥がこんな高い声を出すのか?

 松田さんに問い合わせると、甲高い声は別の鳥のものだという。ヤマドリはほとんど鳴かず、発するのは繁殖期の春に雄が縄張りを宣言したり、雌を誘ったりするために翼を強く羽ばたかせる「母衣(ほろ)打ち」の音。「近くで聞くと、腹に響くくらい迫力がありますよ」と松田さん。周波数が100ヘルツほどと重低音なため、再生する機器によっては聞こえないこともあるのだそうだ。

 松田さんのアドバイスを受け、イヤホンを着け、ボリュームを上げてみる。甲高い鳴き声の後ろから「ドドドドド」という小刻みな低音が聞こえてきた。うれしい気持ちになったが、春の山でこの音を腹に響かせてみたくなった。

ヤマドリ
Syrmaticus soemmerringii

全長:雄125センチ、雌55センチ
分布:本州、四国、九州。生息する地域により羽色が異なり、5亜種に分けられる。
生息環境:山地の林
保全状況:環境省レッドリストで、九州に生息する2亜種が準絶滅危惧。