9.11を生き延びた「サバイバーツリー」

 樹木は私たち人間に寄り添い、ときに安らぎを、ときに勇気を与えてくれる。ナショナル ジオグラフィックの『心に響く 樹々の物語』は、そんな樹々と人間の物語を、ダイアン・クックとレン・ジェンシェルによる美しい写真でつづる本だ。ここではその中から、悲惨な事件をともに乗り越えた、一本のマメナシを紹介しよう。

米国ニューヨーク州にある国立9.11追悼博物館のマメナシ。通称「サバイバーツリー」(Photograph by Diane Cook and Len Jenshel)
[画像のクリックで拡大表示]

 日本を含む東アジアおよびベトナム原産のマメナシは、1950年代のアメリカで都市部の街路樹に植えられることが多かった。病気に強く、さまざまな気候や土壌に対応して生き延びられるたくましさがあったからだ。だが、かつてロウワー・マンハッタンにあったリバティプラザ公園を彩っていた一本のマメナシに求められたのは、けた違いに過酷な環境を生き延びる強さだった。

 2001年9月11日のテロ攻撃によって世界貿易センタービルが崩壊したあと、この木は、救助活動と復旧作業の最中に、ビルのがれきの下から出てきた。幹は焼け焦げ、ほとんどの枝は失われ、根はぼろぼろだった。だが、高熱にさらされたうえ、重いがれきの下敷きになっていたにもかかわらず、わずかながら緑色の新芽が吹いていた。

 ブロンクスの園芸場へ持ち込まれた木は、ニューヨーク市公園レクリエーション部の職員の手当てを受けて、見事に立ち直った。リハビリが終わると、この「サバイバーツリー(生き延びた木)」は、9.11追悼博物館のサウスプール(南池)脇に再び植えられた。サウスプールは、かつて世界貿易センタービルのツインタワーが建っていた場所に設けられた、二つの人工池のうちの一つだ。マメナシは早咲きのため、春になると追悼施設の中で最初に花を開き、最後に紅葉する。

 世界貿易センタービルの跡地に立つ「サバイバーツリー」は、再生と力強さの象徴として人々に愛されている。

おすすめ関連書籍

心に響く 樹々の物語

ナショナル ジオグラフィックの写真家が、2年をかけて五大陸をまわり、物語のある美しい樹木を集めました。

定価:本体2,750円+税