第6回 ツシマヤマネコとの共存はリアルな「はてしない物語」

 IUCNの専門家グループを招き、日本の各方面の関係者が一堂に会した2006年のツシマヤマネコ国際ワークショップは、絶滅危惧種の保全や野生復帰について世界レベルの知見を対馬にもたらすことになった。

 中心的な課題として挙げられた4つの課題の中で、「ツシマヤマネコと共生する地域社会づくり」「飼育下繁殖」「感染症対策」の3つをすでに見た。

 最後に残ったのは、絶滅危惧種の保護でキモともいえる「生息域内保全」だ。

井の頭自然文化園のツシマヤマネコ。
[画像のクリックで拡大表示]

 生息域にいる絶滅危惧種をその場において守るのは、言うまでもなく中心的な課題である。

 ここにきて羽山さんは若干、悲観的な見解を述べた。

「ワークショップの後で、10年後の野生個体数を現在より10%増やすのを目標のひとつに掲げました。でも、増えているふうには見えない。全島の個体数調査って、また新しいのが近々出ると思いますが、少なくともこの10年間は、横ばいか、むしろ場合によっては減少しているかもしれない」

日本獣医生命科学大学の羽山伸一さん。
[画像のクリックで拡大表示]

 前にも述べたが、ツシマヤマネコの推定個体数は、2000年代の前半に80から100頭、2010年代の前半に70から100頭で、あまり変化がない。このトレンドは、その後も変わっていないという見立てである。

「もう6年ぐらい前から、上島のある地域で、毎年、1つの谷を学生たちと糞を拾って歩いています。縄張りにしているメスの糞を見つけて、その遺伝子を半分持っているものも見つかれば、つまり繁殖してるってことじゃないですか。それなのに、いまだに子どもが見つからないんですよ。調査をするのは8月から9月ぐらいなので、春に生まれた子どもがもう離乳して、親と一緒か、まわりをフラフラしてるかぐらいの時期のはずなんですが、見つからない。子別れしたら、もうあっという間にどっか行っちゃうのか、単に生まれていないのか。そもそも、去年なんかは野犬ばっかりで、縄張り個体の糞も見つからなくなっちゃったし……」